
立地調査の進め方とは?失敗しないためのポイントと具体的な方法を解説
店舗の新規出店は、多くの事業者にとって大きな挑戦であり、成功の鍵を握るのが「立地調査」です。どれほど素晴らしい商品やサービスも、場所を誤れば顧客に届かず、成果を上げることは困難です。
「ビジネスは立地で7割決まる」と言われるほど、出店場所の選定は事業の成否を左右する重要な要素です。
本記事では、立地調査の重要性から具体的な手順、確認すべきポイント、便利なツールまでを体系的に解説し、あなたのビジネスを成功に導くためのサポートをします。
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目次[非表示]
- 1.立地調査とは?事業成功を左右するその重要性
- 1.1.なぜ立地調査はこれほど重要なのか
- 1.2.立地調査が目指す3つの主要な目的
- 2.【5ステップ】失敗しない立地調査の具体的な手順
- 2.1.手順1:出店コンセプトとターゲットを明確にする
- 2.2.手順2:候補エリアの選定とマクロデータの分析
- 2.3.手順3:現地調査でリアルな情報を掴む
- 2.4.手順4:競合店の調査で差別化要因を探る
- 2.5.手順5:総合的な評価と最終判断
- 3.立地調査で必ず確認すべき10のチェックポイント
- 3.1.ポイント1:商圏人口とターゲット層の分布
- 3.2.ポイント2:歩行者・自動車の通行量
- 3.3.ポイント3:最寄り駅からのアクセスと動線
- 3.4.ポイント4:競合店の位置と事業内容
- 3.5.ポイント5:物件の視認性と入りやすさ
- 3.6.ポイント6:周辺施設との相乗効果
- 3.7.ポイント7:地域の将来性と再開発計画
- 3.8.ポイント8:昼夜・曜日・天候による変化
- 3.9.ポイント9:物件の物理的条件と法規制
- 3.10.ポイント10:ハザードマップによる安全性確認
- 4.立地調査を効率化するおすすめツール
- 5.【業種別】立地調査で特に重視すべきポイント
- 6.立地調査でよくある失敗例と注意点
- 7.まとめ
立地調査とは?事業成功を左右するその重要性
立地調査とは、店舗を出店する際に、その場所がビジネスに適しているかどうかを多角的に調査・分析することです。
候補となる土地や物件の周辺環境、人の流れ、競合の状況などを詳細に調べることで、出店後の売上を予測し、事業計画の精度を高める目的があります。
なぜ立地調査はこれほど重要なのか
商業の世界では「立地7割」という言葉があるほど、立地の選定はビジネスの成功を大きく左右します。
提供する商品やサービス、店舗の内装や接客は後からでも改善が可能ですが、一度決めた立地を簡単に変更することはできません。
初期投資を無駄にしないためにも、事前の入念な立地調査は不可欠なのです。精度の高い調査を行うことで、出店後の「こんなはずではなかった」という事態を防ぎ、安定した経営基盤を築くことができます。
立地調査が目指す3つの主要な目的
立地調査の目的は、単に場所が良いか悪いかを判断するだけではありません。
主に以下の3つの目的を達成するために実施されます。
目的 | 詳細 |
集客力の見極め | 候補地の周辺に、自店のターゲットとなる顧客がどれだけ存在するのか、 また、店舗の前をどれだけの人が通行するのかを把握し、客観的なデータに基づいて集客力を予測します。 |
売上予測の精度向上 | 商圏の人口データや競合店の状況、周辺住民の消費傾向などを分析することで、出店した場合の具体的な売上高を予測します。 これにより、より現実的な事業計画や資金計画を立てることが可能になります。 |
出店リスクの低減 | 治安や災害リスク、将来の都市開発計画などを事前に調査することで、カントリーリスクを回避します。 長期的な視点で安定した経営を目指す上で、リスク要因の洗い出しは非常に重要です。 |
【5ステップ】失敗しない立地調査の具体的な手順
立地調査は、やみくもに行っても十分な成果は得られません。効果的な調査を行うためには体系的なアプローチが不可欠です。
ここでは、成果につながる立地調査を5つのステップに分けて解説します。
手順1:出店コンセプトとターゲットを明確にする
最初に、「誰に、何を、どのように提供するのか」という店舗のコンセプトを明確にします。
例えば、「20代の女性をターゲットにした、SNS映えするスイーツを提供するカフェ」と、「平日のランチ需要を狙った、ビジネスマン向けの定食屋」とでは、適した立地は全く異なります。
コンセプトを具体化することで、どのような場所を探すべきかの方向性が定まります。
手順2:候補エリアの選定とマクロデータの分析
店舗コンセプトに合致するエリアを複数リストアップします。
そのうえで、国勢調査などの公的な統計データを活用して、各エリアの人口、年齢構成、世帯年収といったマクロな情報を比較検討します。
この段階で、明らかにターゲット層とズレがあるエリアは候補から外すことで、後の調査を効率に進めることができます。
手順3:現地調査でリアルな情報を掴む
データ分析だけでは把握しきれない、現地の「生の情報」を得るために、必ず現地調査(フィールドワーク)を行います。
曜日や時間帯、天候を変えて複数回訪問し、人の流れ、街の雰囲気、騒音や匂い、周辺店舗の賑わいなどを五感で感じ取ることが重要です。
実際に自分の足で歩き、ターゲット顧客の目線で街を観察することで、データだけでは見えてこない貴重な情報を収集できます。
手順4:競合店の調査で差別化要因を探る
候補エリアにある競合店を調査します。 どのような業態の店が、どのくらいの価格で、どんなサービスを提供しているのかを把握することが重症です。
繁盛している店舗があれば、その成功要因を分析することで、自店の戦略に活かすヒントが得られます。
一方で、競合が全く存在しない場合は、そのエリアに需要がない可能性も考えられるため、慎重な判断が必要です。
手順5:総合的な評価と最終判断
これまでの調査結果をすべて集約し、各候補地を多角的に評価します。
評価項目ごとに点数をつけ、客観的に比較検討することが大切です。
評価項目 | 候補地A | 候補地B | 候補地C |
商圏人口 | 〇 | ◎ | △ |
交通量 | ◎ | 〇 | 〇 |
競合状況 | △ | 〇 | ◎ |
物件視認性 | 〇 | △ | 〇 |
総合評価 | B | A | C |
最終的には、データと現地の感覚を総合的に判断し、最も自店のコンセプトに合致し、成功の可能性が高いと判断できる場所を決定します。
立地調査で必ず確認すべき10のチェックポイント
立地調査を成功させるためには、確認すべきポイントを漏れなくチェックすることが重要です。ここでは、最低限確認すべき10のポイントを紹介します。
ポイント1:商圏人口とターゲット層の分布
商圏(店舗に集客できる範囲)内の人口や世帯数、年齢構成などを調査します。
自店のターゲットとなる層が十分に存在するかを確認する、最も基本的な項目です。
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ポイント2:歩行者・自動車の通行量
店舗の前の道路を、どれくらいの人が、どの時間帯に通るのかを計測します。
平日と休日、朝・昼・夜でそれぞれ計測し、人の流れのパターンを把握することが重要です。
ポイント3:最寄り駅からのアクセスと動線
最寄り駅から店舗までの距離だけでなく、実際に歩いた際のルート(動線)を確認します。
信号の数や坂道の有無、歩道の広さ、途中に立ち寄りたくなるような店舗があるかなど、顧客の来店しやすさに影響する要素をチェックします。
ポイント4:競合店の位置と事業内容
自店と直接競合する店舗だけでなく、関連する業種の店舗の存在も確認します。
競合店の強み・弱みを分析し、自店がどのように差別化できるかを考えます。
ポイント5:物件の視認性と入りやすさ
通行人から店舗がどれだけ見やすいか(視認性)は、集客に直結します。
看板の設置場所や、店舗の入り口の広さ、入りやすい雰囲気かどうかも重要なチェックポイントです。
ポイント6:周辺施設との相乗効果
大型商業施設、オフィスビル、学校、公園など、周辺にどのような施設があるかを確認します。
これらの施設から流れてくる人々を、自店の顧客として取り込める可能性があります。
ポイント7:地域の将来性と再開発計画
自治体のウェブサイトなどで、都市開発計画や再開発の予定がないかを確認します。
数年後に大きな商業施設の建設や新駅の開業などが予定されている場合、将来的に人の流れが大きく変わる可能性があるためです。
ポイント8:昼夜・曜日・天候による変化
昼はオフィス街で賑わっていても、夜間や休日は閑散とするエリアも存在します。
また、雨の日は人通りが極端に減る場所もあります。様々な条件下での状況を把握しておくことが大切です。
ポイント9:物件の物理的条件と法規制
物件の間口や奥行き、電気・ガス・水道の容量など、設備面を確認します。
また、用途地域や消防法など、出店したい業態が法的に問題ないかも事前に確認が必要です。
ポイント10:ハザードマップによる安全性確認
自治体が公開しているハザードマップなどを利用し、洪水や地震などの災害リスクを確認します。
従業員と顧客の安全を守るため、また、長期的に安定した経営を続けるために欠かせない視点です。
立地調査を効率化するおすすめツール
立地調査は時間と手間がかかる作業ですが、便利なツールを活用することで効率的に進めることができます。
政府統計など無料で利用できるデータソース
総務省統計局が公開している「e-Stat」は、国勢調査をはじめとする様々な公的統計データを誰でも無料で閲覧・活用できるサービスです。
市区町村別、さらには町丁目レベルでの詳細な人口統計データを入手でき、商圏分析の基礎情報として非常に有用です。
GIS(地図情報システム)を活用した高度な分析
GIS(Geographic Information System)とは、地図上に様々なデータを重ね合わせ、視覚的に分析するためのシステムです。
人口分布や競合店の位置などを地図上で可視化することで、より直感的で高度なエリア分析が可能になります。
専門的なツールが多いですが、近年ではクラウドベースで手軽に利用できるサービスも増えています。
民間企業が提供するエリアマーケティングツール
地図会社やマーケティング会社からは、より詳細なデータや分析機能を搭載した有料のエリアマーケティングツールが提供されています。
これらのツールでは、推計年収データや消費支出データ、人流データなど、独自のデータを活用した詳細な分析が可能です。
本格的な調査を行いたい場合には、導入を検討する価値があります。
ツールの種類 | 特徴 | 主な活用場面 |
無料統計データ | 公的機関が提供。 信頼性が高く、基本的なデータ収集に最適。 | 初期段階での広域的なエリア比較 |
GIS | 地図上でのデータ可視化・分析に強い。 | 複数のデータを重ね合わせた詳細な商圏分析 |
エリアマーケティングツール | 独自の推計データや人流データを活用できる。 | より精度の高い売上予測や出店判断 |
【業種別】立地調査で特に重視すべきポイント
立地調査の重要項目は、展開するビジネスの業種によっても異なります。
飲食店:ターゲット顧客の生活動線が鍵
飲食店の場合、ターゲットとする顧客が日常的に通る道沿い(生活動線上)に出店することが成功の鍵となります。
ランチ需要を狙うならオフィス街、ディナー需要なら住宅街や繁華街といったように、顧客の利用シーンを具体的に想定して場所を選ぶ必要があります。
小売店:周辺の競合と顧客層の分析が重要
アパレルや雑貨などの小売店では、周辺の競合店の調査が特に重要です。
同じような商品を扱う店舗が集中しているエリアは激戦区となりますが、一方で関連商品を扱う店舗が集まることで、エリア全体での集客力が高まるというメリットもあります。
周辺店舗との相乗効果が見込めるかを慎重に判断します。
クリニック・士業:信頼性とアクセスの良さを両立
クリニックや法律事務所などの専門サービス業では、信頼性が重要視されます。
落ち着いた環境であることに加え、高齢者や体調の優れない方でもアクセスしやすいよう、駅からの近さやバリアフリーへの配慮も重要なポイントとなります。
立地調査でよくある失敗例と注意点
最後に、立地調査で陥りがちな失敗例と、それを回避するための注意点を解説します。
データのみを信じ現地調査を軽視する
データ上は魅力的に見えても、実際に訪れてみると「想定と違った」ということは少なくありません。
データ分析と現地調査は、どちらも欠かせない要素であり、両社を組み合わせてはじめて正確で多角的な視点から判断することが重要です。
希望的観測で都合の良い情報だけを見てしまう
「この場所に出店したい」という思いが強すぎると、無意識に自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてしまうことがあります。
常に客観的な視点を忘れず、デメリットやリスクにも目を向ける冷静さが求められます。
一時的な視点でのみ判断し将来性を見落とす
現在の状況だけでなく、5年後、10年後といった長期的な視点を持つことが大切です。
周辺の再開発計画や人口の増減傾向などを考慮し、長期にわたって安定した経営が見込める場所を選びましょう。
まとめ
立地調査は、新規出店における成功確率を飛躍的に高めるための、最も重要なプロセスの一つです。
立地調査において最も重要なのは、正確な人流データの把握です。ゼンリンデータコムの混雑統計®では、数百万台の携帯電話GPSデータから、対象エリアの人の動きを詳細に分析できます。
来訪者数、滞在時間、移動経路など、立地選定に必要な要素を網羅的に調査し、過去7年間のデータと比較することで将来予測も可能になります。
専任担当者がお客様の課題に合わせてオーダーメイドで調査設計を行うため、効果的な立地判断をサポートいたします。
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