
交通量調査のやり方を徹底解説!調査の種類から費用、外注先の選び方まで
交通量調査は、道路計画や店舗開発など、さまざまな事業計画の基礎となる重要な情報収集活動です。しかし、実際に調査を始めようとすると、「具体的に何から始めればいいのか」「どのような方法があるのか」と戸惑う方も少なくないでしょう。
本記事では、交通量調査の基本的なやり方から、目的に応じた調査の種類、費用の相場、さらには専門業者へ委託する際のポイントまで、担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。調査を成功させ、精度の高いデータを取得するための一助としてください。
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目次[非表示]
- 1.交通量調査とは?目的と重要性を解説
- 2.交通量調査の主な種類と特徴
- 2.1.人力による観測調査
- 2.2.調査機器を用いた機械調査
- 2.3.ビデオカメラとAIを活用した調査
- 2.4.ETC2.0などビッグデータの活用
- 3.【自分で行う場合】交通量調査の基本的なやり方と手順
- 3.1.手順1:調査目的と調査項目を明確にする
- 3.2.手順2:調査地点と日時を決定する
- 3.3.手順3:調査員と必要な機材を準備する
- 3.4.手順4:調査を実施し、データを記録する
- 3.5.手順5:データを集計・分析し報告書を作成する
- 4.交通量調査を成功させるためのポイント
- 5.交通量調査にかかる費用の相場
- 5.1.人力調査の場合の費用内訳と目安
- 5.2.調査を外注する場合の費用感
- 6.専門業者への外注(委託)も有効な選択肢
- 6.1.外注するメリットとデメリット
- 6.2.信頼できる調査会社の選び方
- 7.国や自治体による大規模交通量調査とは?
- 8.まとめ
交通量調査とは?目的と重要性を解説
交通量調査とは、特定の地点を一定の時間内に通行する車両や歩行者の数を計測する調査です。
この調査によって得られるデータは、私たちの生活に密接に関わるさまざまな計画の意思決定において、客観的な根拠として活用されます。
道路計画やまちづくりの基礎となるデータ
国や地方自治体が行う交通量調査は、主に道路の計画、建設、維持管理のための基礎資料を得ることを目的としています。
例えば、渋滞が頻発している道路の拡張計画や、新しいバイパス道路の建設、危険な交差点の改良などを検討する際に、現状の交通量を正確に把握することが不可欠です。
このような公的な調査は「全国道路・街路交通情勢調査(通称:道路交通センサス)」として大規模に行われることもあり、日本の交通インフラ整備を支える重要な役割を担っています。
調査主体 | 主な目的 | 具体的な活用例 |
国・地方自治体 | 道路の計画、建設、維持修繕 | 渋滞解消のための道路拡張、バイパス建設、交差点改良 |
警察 | 交通安全対策、交通規制の検討 | 信号機の設置、横断歩道の新設、速度規制の見直し |
都市計画コンサルタント | まちづくり、再開発計画 | 新しい街区の道路網設計、公共交通機関のルート検討 |
店舗開発やイベント計画の成功を左右する
民間企業にとっても交通量調査は極めて重要です。特に、新規店舗の出店計画においては、候補地周辺の通行量(自動車、歩行者)が将来の売上を予測するための重要な指標となります。
ガソリンスタンドやファミリーレストラン、コンビニエンスストアなどのロードサイド店舗はもちろん、駅前の商業施設にとっても、人の流れを把握することは事業成功の鍵を握ります。
また、大規模なイベントや建設工事を行う際には、周辺道路への交通影響を予測し、必要に応じて渋滞対策や警備員の配置計画を立てるために交通量調査が実施されます。
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交通量調査の主な種類と特徴
交通量調査にはいくつかの手法があり、目的や予算、求められるデータの精度に応じて最適な方法を選択する必要があります。
ここでは、代表的な調査手法の特徴を解説します。
人力による観測調査
調査員が現地に赴き、カウンター(数取器)を使って目視で車両や歩行者をカウントする方法です。交差点での右左折・直進の方向別や、車種別の細かい分類が可能な点が最大のメリットです。
たとえば、「大型貨物車」「小型貨物車」「バス」「乗用車」といった分類での計測が求められる場合に適しています。 一方で、長時間(特に24時間)の調査では調査員の集中力の維持が課題となり、人件費が高くなるというデメリットもあります。
調査機器を用いた機械調査
道路上に「トラフィックカウンター」と呼ばれる専用の測定器を設置して、自動で交通量を計測する方法です。赤外線センサーやチューブ式のカウンターなどがあり、人手を介さないため24時間や数日間にわたる長期間の調査を低コストで実施できるメリットがあります。
ただし、機械では詳細な車種の分類や、交差点での複雑な動きを捉えることは難しく、あくまで特定断面を通過する交通量の把握が主な目的となります。
ビデオカメラとAIを活用した調査
近年、技術の進歩によりビデオカメラで撮影した映像をAI(人工知能)で解析し、交通量をデータ化する手法が増えています。
この方法の利点は、映像が残るため後からでも確認ができること、AIによる自動解析で車種分類や方向別カウントを高精度で行える可能性があることです。
天候や夜間の撮影条件によっては精度が落ちるという課題もありますが、人力と機械式のメリットを両立できる手法として注目されています。
ETC2.0などビッグデータの活用
高速道路などでは、ETC2.0のプローブ情報を活用して、車両の走行履歴から交通量や旅行速度を把握する取り組みも進んでいます。
これは個別の車両の動きを大規模に集約したビッグデータであり、広域的な交通動態を分析するのに非常に有用です。
ただし、一般道での活用や、特定の地点での詳細な交通量を把握するには、他の調査手法との組み合わせが必要となります。
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【自分で行う場合】交通量調査の基本的なやり方と手順
専門業者に委託せず、自社で交通量調査を実施する場合の基本的な流れを5つのステップで解説します。
手順1:調査目的と調査項目を明確にする
まずは、「何のために交通量調査を行うのか」という目的を明確にします。
たとえば、「店舗出店の判断材料にしたい」「イベント開催時の渋滞対策を立てたい」といった具体的な目的があると、調査すべき内容や方法が自然と定まってきます。
目的が定まったら、調査項目を整理します。主な項目としては以下のようなものがあります:
- 進行方向:直進、右折、左折など
- 車種分類:大型車、小型車、バイク、自転車、歩行者など
- 時間帯:12時間、24時間、ラッシュ時のみなど
手順2:調査地点と日時を決定する
次に、調査を行う場所と日時を決定します。
調査地点は、目的を達成するために最も適切な場所を選定しますたとえば、店舗出店候補地の前や、最寄りの主要な交差点などが考えられます。
調査日時は、その地点の平均的な交通状況が把握できる日を選ぶのが原則です。一般的には、天候が安定している秋季(9月~11月)の平日(火・水・木曜日)が選ばれることが多いです。
特売日や休日、悪天候の日などは交通量が変動するため、特別な目的がない限り避けるのが賢明です。
手順3:調査員と必要な機材を準備する
調査に必要な人員と機材を確保します。調査員は、調査地点の交通量や方向の複雑さに応じて適切な人数を配置します。
機材としては、主に以下のものが必要です。
- カウンター(数取器):車種別や方向別に複数個用意します。
- 筆記用具・調査用紙:時間帯ごとに記録するための用紙を作成します。
- 椅子、時計、雨具など:調査員が安全かつ快適に調査できる備品。
公道で調査を行う場合は、事前に所轄の警察署に「道路使用許可」を申請する必要があるため、忘れないようにしましょう。
準備物 | チェック項目 |
調査員 | 必要な人数、交代要員の確保 |
カウンター | 必要な個数、正常に作動するかの確認 |
調査用紙 | 時間、方向、車種などの記録欄が網羅されているか |
道路使用許可 | 管轄警察署への事前申請 |
その他 | 椅子、時計、雨具、夜間調査用の照明など |
手順4:調査を実施し、データを記録する
計画に基づき、現地で調査を実施します。調査員は指定された場所で、決められた車種や方向の交通量をカウンターで計測し、一定時間ごと(例:15分、1時間)に調査用紙へ記録します。
カウントミスや記録漏れがないよう、集中して行うことが重要です。
手順5:データを集計・分析し報告書を作成する
調査終了後、回収した調査用紙のデータを集計します。Excelなどの表計算ソフトを使い、時間帯別、方向別、車種別の交通量をまとめ、グラフ化すると視覚的に分かりやすくなります。
集計結果から、交通のピーク時間や車種の構成比などを分析し、調査目的の答えとなる考察を加えて報告書としてまとめます。
交通量調査を成功させるためのポイント
精度の高いデータを得て調査を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
調査目的に合致した手法を選択する
前述の通り、交通量調査には様々な手法があります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、今回の調査目的は何か、どの程度の精度が必要か、予算はどれくらいかを総合的に勘案して、最適な手法を選ぶことが成功の第一歩です。
たとえば、交差点の複雑な車両の動きを把握したいなら人手による調査が有効ですし、長時間にわたる交通量の変化を把握したい場合には自動計測機器の活用が適しています。
天候や特異日(祝日など)の影響を考慮する
雨や雪などの悪天候は、交通量に大きな影響を与えます。
また、祝日やその前後、大型連休、近隣でのイベント開催日なども通常とは異なる交通パターンを示す可能性があります。
こうした特異日を避け、平常時のデータを取得することが、信頼性の高い分析につながります。どうしてもその日に調査が必要な場合は、結果を解釈する際にその影響を考慮に入れる必要があります。
調査員の役割分担と事前教育を徹底する
人力で調査を行う場合、調査員のパフォーマンスがデータの質を直接左右します。
調査前には必ず説明会などを実施し、調査の目的、車種の見分け方、カウント方法、記録のタイミングといったルールを全員で共有することが不可欠です。
誰がどの方向・車種を担当するのか、役割分担を明確にすることで、混乱やカウント漏れを防ぎます。
交通量調査にかかる費用の相場
交通量調査にかかる費用は、調査方法や規模、期間によって大きく変動します。
人力調査の場合の費用内訳と目安
人力での調査費用は、主に「調査員の人件費」「現場管理費」「道路使用許可申請などの諸経費」「集計・報告書作成費」で構成されます。
調査員1人あたりの人件費は、地域や時間帯(日中・夜間)にもよりますが、1時間あたり1,500円~2,500円程度が目安です。
例えば、1つの交差点で12時間調査を行う場合、複数の調査員が必要になるため、総額で10万円以上になることも珍しくありません。
調査を外注する場合の費用感
専門の調査会社に委託する場合、調査のプランニングから機材準備、調査員の確保、集計・分析、報告書作成までを一括で依頼できます。
費用は調査内容によって大きく異なりますが、比較的単純な1地点・12時間の調査で数万円から、大規模な複数地点・24時間の調査になれば数十万円から百万円以上になることもあります。
まずは複数の会社から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。
専門業者への外注(委託)も有効な選択肢
自社で調査を行うリソースがない場合や、より専門的な分析が必要な場合は、調査会社への外注が有効な選択肢となります。
外注するメリットとデメリット
外注の最大のメリットは、手間と時間をかけずに質の高いデータと分析結果を得られる点です。
専門業者は経験豊富な調査員とノウハウを持っており、調査計画から報告書の作成まで一貫して任せることができます。
一方、デメリットとしてはコストがかかる点が挙げられます。自社で行う場合に比べて費用は高くなるため、予算との兼ね合いを考える必要があります。
項目 | メリット | デメリット |
品質 | 経験豊富なスタッフによる質の高いデータと分析 | 特になし |
手間 | 計画から報告まで一括で依頼でき、手間がかからない | 業者選定や打ち合わせの手間は発生する |
コスト | 自社リソースを割かずに済む | 自社で実施するより高額になる傾向 |
専門性 | 交通影響予測など専門的な分析も可能 | 特になし |
信頼できる調査会社の選び方
良い調査会社を選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、交通量調査の実績が豊富かどうかを確認しましょう。 公式サイトで過去の事例などを確認するのが有効です。
また、調査目的を正確に理解し、最適な調査プランを提案してくれるかどうかも重要です。
見積もりの内訳が明確で、こちらの質問に丁寧に回答してくれる会社は信頼できる可能性が高いです。
国や自治体による大規模交通量調査とは?
個人的な調査とは別に、国や地方自治体が定期的に大規模な交通量調査を実施しています。
これらのデータは公表されており、誰でも活用することが可能です。
全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)について
日本で最も代表的な交通量調査が、国土交通省が主体となって行う「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)」です。
これは、全国の道路の交通量や旅行速度、道路状況などを網羅的に調査するもので、数年おきに実施されます。
この調査は、将来の道路計画を策定するための非常に重要な基礎資料となります。
公開されている調査結果の活用方法
道路交通センサスの結果は、国土交通省のウェブサイトなどで公開されており、地図上やデータ形式で閲覧することができます。
特定の国道や都道府県道の平均交通量などを知りたい場合には、非常に有用な情報源となります。
自社で調査を行う前の予備調査として、あるいはマクロな交通動向を把握するために、これらの公開データを活用するのも一つの有効な方法です。
まとめ
本記事では、交通量調査のやり方について、その目的から具体的な手法、費用、成功のポイントまで幅広く解説しました。
交通量調査は、目的に応じて適切な手法を選び、計画的に実施することが質の高いデータを取得する鍵となります。
従来の交通量調査では時間と人手が課題となりがちですが、最新のGPSデータ解析技術を活用することで、より効率的で正確な調査が可能になります。
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