
安否確認訓練を成功させるには?目的の整理からシナリオ作成のポイントを解説
突如災害が発生した際、企業は従業員の安否確認をはじめ、被害の全体像を把握して適切な判断を下す必要があります。また、いざ災害が発生した時に、スムーズに安否確認を実施するためにも訓練をしておく必要もあります。
しかし、具体的にどのように訓練を実施すればよいのか分からない方も多いでしょう。
そこで今回は、安否確認訓練の重要性や行う目的から、訓練の流れ、シナリオ作成のポイント、安否確認の手順について解説します。防災意識と災害時の対応力を高めたい方は、ぜひご覧ください。
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目次[非表示]
- 1.安否確認訓練とは?
- 1.1.安否確認訓練の重要性
- 1.2.BCP(事業継続計画)とは?
- 2.安否確認訓練を行う目的
- 2.1.迅速な安否確認と初動対応を強化するため
- 2.2.連絡手段の確認
- 2.3.災害発生時の迅速な情報共有ができるように
- 2.4.BCP(事業継続計画)との連携
- 2.5.従業員の防災意識の向上
- 2.6.訓練による課題の発見と改善
- 3.安否確認訓練を行う際の流れ
- 3.1.訓練の目的と範囲を決める
- 3.2.訓練のシナリオを作成する
- 3.3.実施前の準備と関係者へ周知する
- 3.4.訓練の実施
- 3.5.課題を見直しマニュアルを更新する
- 4.安否確認の手順
- 4.1.自分の安全を確保する
- 4.2.周囲の確認をする
- 4.3.周りの人の安全を確保する
- 4.4.責任者へ報告する
- 5.安否確認訓練のシナリオ作成のポイント4選
- 6.まとめ:安否確認訓練を定期的に実施し、災害時に備えよう
- 7.安否確認には「Area Marker」のご活用を
安否確認訓練とは?
安否確認訓練とは、被災状況を想定して従業員の安全を守る仕組みを構築し、その仕組みが有事の際に機能するのか検証するために実施される訓練です。
災害に関する訓練には避難訓練や初期消火訓練等さまざまなものがありますが、安否確認も定期的に実施することが求められます。まずは、安否確認の重要性や訓練で検証するBCP(事業継続計画)について紹介します。
安否確認訓練の重要性
安否確認訓練が重要な理由には、以下3つの理由が挙げられます。
- 企業としての信頼を得るため
- 従業員に災害の危機感や当事者意識を持ってもらうため
- 事前に策定したBCPが機能するか検証するため
企業は、従業員やその家族の命を守る義務があります。そのため、いざ災害が発生した際にスムーズな安否確認を行えるように体制を構築する必要があります。
しかし体制を構築するだけでは不十分であり、有事の際に安否確認システムや策定したBCPが実際に機能するのかどうかを確認するために訓練が必要です。
万全な安否確認の体制が整っていれば、従業員や取引先、顧客からの信頼度が向上するというメリットもあります。
また、訓練を通して従業員は、災害の危機感や当事者意識を身に付けることが可能です。これらの意識を持つことで、従業員は積極的に災害に関する訓練に参加し、実際に災害が発生した際も冷静に対応できるようになるでしょう。
BCP(事業継続計画)とは?
BCPは事業継続計画のことを指し、災害などの緊急事態が発生した際に被害を最小限に抑え、事業を継続させるために早期復旧を実現させるための計画です。BCPの有効性を確認するためには、安否確認訓練が重要な役割を果たします。
入念にBCPを立てたとしても、有事の際に計画どおりに機能しなければ、従業員の安否確認や復旧の対応に遅れが発生する可能性があります。それを回避するためには、訓練を通じてBCPが計画どおりに機能するのか検証することが大切です。また、定期的に訓練を行うことで、BCPの改善点が見つかり、さらに実用性の高いBCPにブラッシュアップできます。
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安否確認訓練を行う目的
企業が安否確認訓練を行う目的はいろいろあります。具体的な目的は以下のとおりです。
迅速な安否確認と初動対応を強化するため
迅速な安否確認の実現と初動対応を強化するためには、安否確認訓練が不可欠です。
災害時に従業員がBCPの運用ルールを理解していなかったり、安否確認ツールの操作に不慣れであったりすると、安否確認に遅れが生じてしまう可能性が高まります。
従業員の安否確認が遅れると、事業再開も遅れてしまい、企業の存続に影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐためには、訓練を通じてルールの理解を深め、ツールの操作に慣れることが重要です。
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連絡手段の確認
安否確認訓練では、実際の災害を想定して従業員との連絡手段を確認します。従業員と実際に連絡がとれる体制が整っていなければ、スムーズな安否確認を実現できません。
そのため、訓練で連絡手段に問題ないか確認が必要です。従業員の安否確認の方法には、以下のものが挙げられます。
- 電話
- メール
- SNS
- チャットアプリ
- 通信会社の災害伝言ダイヤル
- 安否確認システム
これらの方法は、状況や従業員ごとに使い分けることが求められます。それぞれの連絡方法で安否確認訓練を行う必要があります。
特に安否確認システムは、災害発生時に自動で従業員にメールを発信し、回答を集計するなど安否確認を支援するものです。操作に慣れていないと、いざという時に使えないので、訓練で操作法をマスターすることが重要です。
災害発生時の迅速な情報共有ができるように
安否確認訓練の目的は、災害発生時に迅速な情報共有ができる仕組みを構築することです。
被害を最小限に抑え、事業を早期に復旧させるためには、迅速に被害状況を把握し、対応策を決定し、情報を共有する必要があります。
事前に構築した情報共有できる仕組みが機能するかどうかは、実際に試してみないとわかりません。実際にさまざまな災害を想定して訓練を行うことで、迅速な情報共有が可能かどうかを確認することができます。
BCP(事業継続計画)との連携
策定したBCPと連携するためにも安否確認訓練が必要です。安否確認はBCPに基づいて行われるため、有効性のある計画を立てなければなりません。
訓練の際にスムーズな安否確認が行えれば、BCPが有効と判断できます。反対にスムーズにいかなかった時はBCPが有効とは言えないので、計画を見直す必要があるでしょう。
策定したBCPが有効であり、計画どおりに安否確認や復旧の対応ができるのか確認するためには訓練が欠かせません。
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従業員の防災意識の向上
安否確認訓練には、従業員の防災意識を高める目的もあります。災害時に訓練の効果を発揮するためには、従業員が当事者意識を持って訓練に参加することが重要です。
従業員の中には、自分が暮らす地域では災害がほとんど起きないと油断している人もいるかもしれません。また、毎回同じような訓練内容であるため、真剣に参加しない人も少なくありません。
企業は防災意識を引き出す訓練を計画し、従業員が積極的に参加するように促すことが大切です。
従業員の防災意識が高まることで、災害が発生した際に各自が適切な対応をとれるようになります。その結果、初動の遅れを防ぐことにつながるでしょう。
訓練による課題の発見と改善
安否確認訓練は、訓練を通じて課題を把握し、改善する目的もあります。完璧に策定したBCPでも、実際に訓練を行うことで問題点が明らかになることがあります。
これらの問題点は放置せずに改善し、BCPを有効なものにしていく必要があります。
BCPはPDCAサイクルを回して継続的にブラッシュアップすることが重要です。改善した計画が有効かどうかを検証するためには、繰り返し安否確認訓練を行うことが求められます。
安否確認訓練を行う際の流れ
安否確認訓練を実施するためには、その手順を知っておく必要があります。ここでは、安否確認訓練を行う際の一般的な流れを紹介します。
訓練の目的と範囲を決める
安否確認訓練の準備として、まずは訓練の目的と範囲を決定します。目的は訓練のシナリオ制作をする際に必要であり、従業員に当事者意識を持って積極的に参加してもらうためです。
シナリオは、訓練の目的や従業員に身に付けてほしい内容を意識して作成します。目的が明確であれば、従業員は訓練の重要性を理解しやすくなり、当事者意識が生まれやすくなります。積極的に参加してもらうことで、防災意識が高まります。
また、一度にすべての行動をしようとすると、時間がかかるため、業務の時間を割いて訓練を行う際には、訓練の範囲を従業員が身に付けてほしい内容から決めて実施すると良いです。
どの災害やリスクに対応するために訓練にするか、安否確認や本部の立ち上げなど項目を絞ったり、行動全体の流れを確認したり、実施するたびに考えていきましょう。
訓練のシナリオを作成する
安否確認訓練では、実際の災害を想定してシナリオを作り、それに基づいて訓練を進めます。有意義な訓練にするためには、従業員一人ひとりが危機感を持って訓練に望めるシナリオを作ることが重要です。
シナリオ作成では、地震や台風、火災等さまざまな災害を想定し、複数のパターンで作成します。また、災害が発生する時間帯もさまざまなケースを想定しておくことも大切です。
実施前の準備と関係者へ周知する
訓練の実施に向けて準備を行い、関係者に周知します。準備段階では、マニュアルの作成や確認、指定のツールが使えない場合を想定して代替ツールの運用をご検討ください。
また、従業員などの関係者には訓練の実施を伝えておきます。災害の種類や規模、発生時間、訓練の対象者等の情報を伝えておくと、参加者は当日どのように行動すればいいのかイメージしやすくなります。訓練の管理者も当日の監視がしやすくなるメリットもあります。
訓練の実施
準備と周知が完了したら、予定していた日程で訓練を実施します。訓練はBCPの記載内容に沿って行いましょう。安否確認はBCPにおける初動対応のひとつであるため、訓練では災害発生直後の初動対応に問題がないかチェックしてください。
また、実際の動きの流れや対応にかかった時間は測定することをおすすめします。安否確認でシステムを使うこともあるため、全回答を取得するまでの時間や回答にかかった時間等を測定しましょう。
システムの種類や扱う従業員の性別・年齢などによって、操作時間に違いが生じることがあります。時間を計っていればスムーズにシステムの操作ができたかどうかを判別しやすくなり、必要に応じて対策や改善策を検討しやすくなります。
課題を見直しマニュアルを更新する
訓練が終わったら、訓練内容を振り返り、課題があれば見直してマニュアルを更新しましょう。参加者にアンケートをとり、時間がかかった作業やどんな対策が必要に感じたのか等の意見を集めるのがおすすめです。
実際に訓練に参加して人の意見から改善するべき課題を見つけられます。課題に応じて改善案を見つけ、改善に合わせてマニュアルも修正してください。今後も訓練を繰り返して課題の解決とマニュアルの改善に努めていきましょう。
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安否確認の手順
安否確認訓練では、準備から実施、振り返りまでの流れだけではなく、安否確認の手順も把握しておく必要があります。次に、安否確認の手順を見ていきましょう。
自分の安全を確保する
災害発生直後は、まず自分の安全を確保してください。自分の安全を確保できないと、その後に適切な対応が難しくなる恐れがあるので、自分の安全を最優先にしましょう。
例えば、地震の場合は、机の下に入り込んで頭部を守ったり、背の高い棚や窓際、照明器具などの下から離れたり、操作中の機械類の動作を止めるといった行動が求められます。その場から非難が必要な時は、普段から避難経路を把握しておき、速やかに避難を行いましょう。
周囲の確認をする
自分の安全を確保できたら、周囲の状況を確認します。たとえば、近くに怪我人がいれば応急手当や避難の避難の手助けを行う必要があります。
また、建物の状況も確認しておきましょう。ガラスの破片が落ちている場所や崩れそうな場所など、危険な場所を把握し、近づかないようにしましょう。
他にも扉を開けて脱出できるか、エレベーターは動くか、水道や電気は使えるかなどの確認も必要です。
周りの人の安全を確保する
周りの人の安全を確認や確保も重要です。周囲の人に声をかけて、無事かどうか確認してください。
閉じ込められて出られない場合など、救助が必要な時は、周りの人の声をかけて救出します。深刻な負傷がある時や火災が発生した際には消防や緊急要請が必要です。
また、安全な場所に避難することも大事です。特に大地震の場合、何度も訪れる余震によって被害が拡大することがあります。周りの人と協力しながら、避難誘導をして安全な場所に移動してください。
責任者へ報告する
自分と周囲の人の安全を確保し、ある程度状況の把握がしたら、責任者に報告します。そして、責任者の指示に沿って行動しましょう。
報告を受けた各責任者は、上層の責任者に報告し、最終的に社長が全容を把握できるようにしましょう。社長は全容を理解した上で、適切な対応指針を提示してください。
災害の被害状況によっては身近の責任者に報告できない場合も想定されるため、その時は誰に報告するべきか、対応策を考えて訓練することも重要です。
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安否確認訓練のシナリオ作成のポイント4選
安否確認訓練では具体的なシナリオを作成する必要がありますが、作成するにあたって意識したいポイントがあります。そのポイントは以下のとおりです。
①地震・火災・水害等複数の災害を想定する
訓練のシナリオは、さまざまな災害を想定して複数のパターンを用意しておきましょう。想定される主な災害は以下のとおりです。
- 地震(直下型地震・津波の被害が懸念される海溝型地震)
- 大規模火災
- 巨大台風や豪雨災害
- 高潮・高波
- 火山噴火
- 大雪
- 危険物による爆発事故
- 鉄道・航空・会場・自動車等の事故
このように災害や事故の種類が多岐にわたります。過去の事例を参考にして、どのような状況が発生する可能性があるか、どのような初動対応が必要なのかをシミュレーションすることで、実現性の高いシナリオを作成することが可能です。
②勤務時間内と時間外の対応を考慮する
シナリオは勤務時間内と時間外の対応にも考慮して作成しましょう。災害はいつ発生するか分からず、勤務時間内なのか時間外かによって求められる行動が異なります。
そのため、時間帯別もさまざまなケースを想定してシナリオを作成することが重要です。
時間帯も考慮することで、災害の状況と対応のイメージを具現化できます。その結果、どの時間帯に災害が発生しても冷静に対応できるようになるでしょう。
③想定外のトラブルへの対応訓練を取り入れる
シナリオには想定外のトラブルへの対応訓練も取り入れましょう。たとえば地震の場合、二次災害として津波や火事などが発生する可能性があります。
これを想定せずに地震のみの対応で訓練してしまうと、いざ二次災害の被害を受けた時に対応できなくなってしまいます。
二次被害が想定する場合、避難場所の確認や消防への連絡手順、火災の消火作業、防止措置なども盛り込んでおきましょう。
④定期的にシナリオを見直し、更新する
作成したシナリオは定期的に見直して更新しましょう。毎回同じシナリオだと、想定外の事態に対応できなくなる可能性があります。また、同じ内容の訓練に従業員も飽きてしまい、真剣に参加しなくなることも懸念されます。
シナリオを見直すことで、訓練に緊張感を与えることができ、従業員が真剣に取り組みやすくなります。マンネリを防ぐためにシナリオの欠点を見直して、シナリオをバージョンアップしていきましょう。
まとめ:安否確認訓練を定期的に実施し、災害時に備えよう
災害はいつどこで起きるか分からないため、企業は従業員の安否確認を行い、素早い事業復旧に向けて対応する必要があります。
しかし、連絡体制を整えたり、BCPを策定したりしても、有事の際に機能しなければ意味がないので、訓練を通じて実用性の検証や課題の見直しが必要です。
災害に備えて安否確認訓練を定期的に実施し、実用性があるBCPを確立していきましょう。
安否確認には「Area Marker」のご活用を
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また、被災予測が可能なため、拠点毎に地震や洪水、浸水等のリスクの把握も可能です。リスクがわかることで、拠点別に適切な対策や訓練を講じることが可能となります。
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