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自動運転実現に向けた課題とは?|解決に向けた取り組み例も紹介

近年、各自動車メーカーでは自動運転の機能が搭載された車が次々と開発されています。

しかし、完全な自動運転の実現には、まだまだ課題が山積みなのが現状です。

日本での自動運転に関する技術はどこまで進化しているのでしょうか。

そこで本記事では、自動運転の課題や取り組み、AIとの関係性などについて詳しく解説いたします。

自動運転車を自社の業務で活用したい方などは、ぜひ本記事を今後の動向などをチェックする際の参考にしてください。

※本記事は2022年11月末時点の情報です


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目次[非表示]

  1. 1.自動運転の課題を知る上で必要な知識を整理しよう
    1. 1.1.自動運転とは機械がヒトを介さずに自立的に操縦するシステム
    2. 1.2.自動運転に期待されている社会課題への効果
    3. 1.3.政府が位置付ける自動運転の5つの技術段階(レベル1~5)
    4. 1.4.日本の自動運転の技術段階は現状レベル2~3
  2. 2.完全自動運転実現に向けての2022年時点の課題
    1. 2.1.1.法整備の問題|事故や違反の責任をとるのは誰か?
    2. 2.2.2.自動運転車に対するサイバー攻撃への対策
    3. 2.3.3.AIやセンサーにまつわる技術のよりいっそうの高精度化
    4. 2.4.4.自動車のIT化に対応できる情報インフラの整備
    5. 2.5.5.全道路における高精度3次元地図の整備と更新
  3. 3.自動運転の課題解決に向けた現在の取り組み例
    1. 3.1.1.法整備の問題|レベル4に向けた法改正が進む
    2. 3.2.2.サイバー攻撃|AI特許を活用したサイバーセキュリティ対策技術が開発された
    3. 3.3.3.AI|エッジコンピューテング技術の応用の試み
    4. 3.4.4.高精度3次元地図|道路の標高データによるさらなる高精度化
  4. 4.自動運転の実現はいつから? 今後の見通し
  5. 5.まとめ:2030年、完全自動運転普及の為に課題解決の取り組みが進んでいる
  6. 6.自動運転制御分野の活用ソリューション|いつもNAVI API/SDK × MATLAB®/Simulink®


自動運転の課題を知る上で必要な知識を整理しよう

自動運転の課題を知る上で必要な知識を整理しよう

近年の自動運転システムは、人が少し補助をすれば自動で走行できるほど技術が進化しています。

しかし、完全に自動運転化するためには、まだまだ課題が山積みです。

さまざまな技術が発展しているにもかかわらず、完全普及の目処が経っていない理由について確認しましょう。


自動運転とは機械がヒトを介さずに自立的に操縦するシステム

自動運転とは、人間が行う認知、判断、運転操作などの作業を、人を介さずシステムによって操縦するシステムです。

下記のようなさまざまな設計装置や情報通信技術を利用することで、障害物や道路の車線情報など、周囲の環境を読み取りながら運転操作を自律的に行います。

  • GPS
  • カメラ
  • レーダー(赤外線レーダー・ミリ波レーダー)
  • センサー


自動運転に期待されている社会課題への効果

自動運転に期待されている社会課題への効果は下記の通りです。


交通事故の減少

渋滞による

ストレスの緩和

少子高齢化への対応や生産性の向上
国際競争力の強化
現在の課題

・交通事故の年間死亡者数=約3,000人

→交通事故の原因の96%はドライバーに起因

・渋滞による経済活動への影響

・沿道環境の悪化

→不適切な車間距離や加減速による要因

・地方を中心に、高齢者の移動手段が減少

・トラックドライバーの減少

→高齢化による運転能力の低下や公共交通の衰退が要因

・日欧米で自動運転の開発や普及に向けた積極的な取り組みが行われている

→日本の基幹産業である自動車産業の競争力確保が必要

期待される技術・取り組み

・自動ブレーキ

・安全な速度管理

・車線の維持

など

・適切な車間距離の維持

・適切な加減速の管理

など

・目的地までの数kmを自動運転化

・高速道路での隊列走行

など

・日本主導で自動運転の国際基準を策定

・技術の開発や促進、パッケージ化

効果
ドライバーの操作ミスによる事故を低減できる
渋滞を招く、不適切な運転を抑止できる

・高齢者の交通手段の確保

・ドライバーの負担軽減

・生産性の向上

技術ノウハウに基づく国際展開

※参考:国土交通省「自動運転を巡る動き


政府が位置付ける自動運転の5つの技術段階(レベル1~5)

日本では、自動運転車を国際自動車技術会(SEA)の定義に基づき、5つの技術段階にレベル分けしています。

各レベルの特徴は下記のとおりです。


レベル

自動運転の範囲

特徴
レベル1
運転支援技術あり

アクセルやブレーキなどの一部の操作を自動化する技術を搭載した車

レベル2
部分的に運転自動化
アクセルやブレーキに加え、ハンドル操作を自動化する技術を搭載した車
レベル3

条件付きで運転自動化

一定の条件の下、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車(システム作動中も運転者はいつでも運転に戻れるようにしておく)

レベル4
条件付きで運転自動化

一定条件の下、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車

レベル5

完全運転自動化

無条件で、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車

これらの定義に基づき、徐々に精度の高い自動運転車の開発と実用を目指しています。


日本の自動運転の技術段階は現状レベル2~3

日本での自動運転の技術段階は、レベル2〜3相当といわれています。

国土交通省では、2025年までにレベル4相当を目指す取り組みが行われています。

主な取り組みは下記のとおりです。

  • 限定地域での無人自動運転移動サービス
  • 高速道路での完全自動運転

また、2021年4月に改正された道路交通法には、「レベル3」までの公道走行が可能となっており、一定の条件の下であれば、ドライバーがハンドルを離して走行することも可能です。

道路交通法の改訂に伴い、2021年3月には国内の大手自動車メーカーが数量限定で「レベル3」相当の自動車を販売しました。

さらに2030年には、日本や欧州、米国などで自動運転が成立するための環境を整える方向性を模索しているようです。

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完全自動運転実現に向けての2022年時点の課題

完全自動運転実現に向けての2022年時点の課題

2022年時点では、すでにレベル4相当の自動車が実用段階に入るともいわれています。

完全自動運転実現に向けた課題について、詳しく解説します。


1.法整備の問題|事故や違反の責任をとるのは誰か?

自動運転が完全に普及しても、交通事故が100%なくなる訳ではありません。

万が一事故を起こしてしまった場合、その責任を誰が負うのかが問題となっています。

こうした法整備の問題は、状況やシチュエーションなどによっても違ってくるでしょう。

たとえば、下記のようなシチュエーションなどです。

ドライバーが操作する車両と完全自動運転車が事故を起こしてしまった場合

  • 完全自動運転車同士の事故であった場合、その責任は自動車メーカー側なのかソフトウエアを提供した企業側の問題なのか

このようなシチュエーションなどを考慮し、日本では現在、完全自動運転車の実現に向けた法整備についての議論が行われているのです。

国土交通省は、自動運転システム利用中の事故における責任の所在について、下記のように説明しています。

  • 従来通り、自動車の所有者や運送事業者などが責任を持つ
  • その上で、保険会社が自動車メーカーと協力して原因の追求や協議を行えるようにする

ただし、レベル5相当の自動運転車が普及した場合は、ドライバーへ責任を負わせることは難しい可能性があるでしょう。

現在はまだ普及していないため、責任が誰にいくのか法整備ができていないため、今後の動向にも注目しておきましょう。


2.自動運転車に対するサイバー攻撃への対策

自動車のIT化が進むことによって、自動車にもサイバー攻撃のリスクが生じます。

たとえば、下記のようなリスクです。

  • 第三者によって故意に事故を引き起こされる懸念
  • ハッキングによる車両の盗難
  • 盗難された車両による事故

完全自動運転の普及にあたっては、こうしたセキュリティー面の対策にも力を入れる必要があるでしょう。


3.AIやセンサーにまつわる技術のよりいっそうの高精度化

完全自動運転の普及には、AIやセンサーにまつわる技術の高精度化は必要不可欠です。

自動運転車は、カメラやレーダーなどの各種センサーがドライバーの目の役割を果たします。

これらの各種センサーが取得した情報をもとに、AIが周囲の状況を分析・把握し、車両に制御命令を発する仕組みです。

また各種センサーは、走行時の妨げとならないよう、極力小さなものを採用し、かつ高精度に物体や周囲の環境の情報を取得する必要があります。

さらに、AIはデータの分析、挙動の予測など、瞬時に正確な判断をする能力が必要です。

ドライバーが混乱するような状況であっても、柔軟で迅速な判断を行わなくてはなりません。

高精度化と正確な判断能力、迅速な対応を追求し、人間以上の能力の実現が求められるでしょう。


4.自動車のIT化に対応できる情報インフラの整備

完全自動運転の普及には、自動車のIT化に対応できる情報インフラの整備も重要です。

センサーの精度が落ちる例として、交差点での死角などが挙げられます。

そのための対策として、交差点にもセンサーを設置すれば、自動車のセンサーと連動することによって人間では把握することが困難な視界領域の情報を入手し、事故を防げる可能性があるでしょう。

このような技術の実現には、情報インフラの整備に加え、5Gに留まらないさらに高速で安定した通信技術も必要になると考えられます。


5.全道路における高精度3次元地図の整備と更新

完全自動運転化を実現させるためには、全道路における高精度3次元地図の整備と更新も必要です。

現在実用化に向けた開発が進められている、レベル3やレベル4の多くは、高精度3次元地図をベースに自動車の位置測定やプランニングを行っています。

地図の整備には、車載センサーから常時情報を収集し、地図の複製や更新を行う技術を開発できれば効率よく行えるかもしれません。

また、3次元地図の整備と更新には、下記のようなシミュレーションを行うことも重要です。

  • 事故多発地帯を抽出し、事故の再現を行い検証する
  • 少しの勾配で大きな渋滞に発展する高速道路を検証する

全道路にわたる地図の更新には、細かいチェックや定期的な更新も行う必要があるため、膨大な労力となる懸念があります。


自動運転の課題解決に向けた現在の取り組み例

自動運転の課題解決に向けた現在の取り組み例

自動運転の本格的な実現に向けて、さまざまな取り組みが行われています。

現在の日本ではどのような取り組みが行われているか、紹介していきます。


1.法整備の問題|レベル4に向けた法改正が進む

上記でも記載したとおり、自動運転の実用化には、法整備の課題をクリアする必要があります。

2022年4月には、レベル4の自動運転車に対し、公道での走行を許可する改正案が成立しました。

しかし、この法改正は事業者を中心とした内容といえます。

自力での運転が困難となった高齢者の移動手段確保や、人手不足が深刻化する物流業界などに対応した改正が中心です。

そのため、一般消費者がレベル4の自動運転車を所有するのは、もう少し先といえるでしょう。


2.サイバー攻撃|AI特許を活用したサイバーセキュリティ対策技術が開発された

2022年7月1日から、自動運転車サイバーセキュリティ対策に関する法規則の適用が決定しました。

サイバー攻撃による被害はすでに発生しており、「停止」の道路標識を「時速60km制限」と誤認させるといった悪質な攻撃手法が確認されています。

そこで、株式会社クリエイターズネクストが開発した「ハイパーパラメーター最適化」がサイバー攻撃対策の特許を獲得しました。

世界トップのセキュリティ防御技術の達成により、今後はサイバー防御に特化した回路の開発を行い、自動車メーカーに販売するとされています。

また、最新のサイバー攻撃に対応するためのプラットフォームを、サブスクリプションで提供することも視野に入れているようです。


3.AI|エッジコンピューテング技術の応用の試み

自動運転技術の実現に向け、新しいテクノロジーと組み合わせる試みもあるようです。

その代表的な例として、エッジコンピューティング技術の応用によるデータ処理の分散化が挙げられます。

AI機能が搭載された自動運転車には、クラウドAI方式が検討されています

クラウドAI方式とは、処理の重いタスクはクラウドに送信して処理を行い、車側で結果を受信するという方法です。

しかし、膨大な情報量を通信するためには莫大な通信量が必要になってしまいます。

また、クラウドにデータをアップする場合、結果の受信までにミリ秒単位の遅延も懸念されます。

衝突回避や自動ブレーキが必要となる場面では、こうしたミリ秒単位の遅延が命取りになってしまう可能性があるでしょう。

しかし、エッジコンピューティング技術の応用が可能となれば、車両の近くでデータ処理や分析を行うエッジサーバーを設置することで、遅延を少なくできるのです。


4.高精度3次元地図|道路の標高データによるさらなる高精度化

自動運転の本格的な実現に向けて、シュミレーションの精度も重要になってきます。

実車での試験、またはシステム上で平坦な道を走らせシュミレーションというのが標準的であったかもしれませんが、「事故多発地帯を抽出・再現して検証」「勾配が原因となる高速道路の渋滞を検証」など、様々なシナリオでのシュミレーションも重要になってきます。

そういった状況で、MATLAB® という自動運転などの制御分析のシミュレーションを行うシステムに、ゼンリンデータコムの「いつもNAVI API/SDK」を取り組めるようになり、シュミレーション環境の構築に役立てるられる様になりました。

いつもNAVI API」 は「標高データ」を持っているため、これまで再現できなかった橋や勾配、山間部のトンネル等の再現が可能となります。

精密且つ幅広い道路情報を得ることができるため、正確なシミュレーションに活かせるのです。


自動運転の実現はいつから? 今後の見通し

自動運転の実現はいつから? 今後の見通し

現在の日本では、2020年代前半の目標として、高速道路におけるレベル3相当の自動運転化を実現するとしています。

レベル3相当の自動運転車は、一定の条件の下であれば運転操作を自動化して走行することが可能です。

また、2025年前後には高速道路におけるレベル4相当の自動運転化を実現するとされています。

一定条件のもと、すべての運転操作を高度に自動化できる見通しです。


まとめ:2030年、完全自動運転普及の為に課題解決の取り組みが進んでいる

自動運転の完全な実現に向けて、まだまだ課題が山積みです。

レベル4やレベル5のような高度なシステムを搭載した車が走行するためには、法改正や交通インフラの整備に加えて、AIの発展やシュミレーション環境の充実も重要な課題となります。

完全自動運転の実用化に向けた技術の進化や、テクノロジーの発展に、今後さらに注目が集まるはずです。

自動運転車を導入し業務効率改善などを目指している企業の方は、今後の動向を逃さないようチェックしておきましょう。




自動運転制御分野の活用ソリューション|いつもNAVI API/SDK × MATLAB®/Simulink®

ゼンリンデータコムのいつもNAVI API/SDKも、自動運転車の課題解決のために活用されています。

課題解決に活用できる機能や、特徴は下記のとおりです。

  • 自動運転制御分野のシミュレーションシステム「MATLAB®」と連携している
  • 標高付きの道路データを簡単に取得し走行シミュレーションに活かせる
  • 走行ルートの燃費・電費計算を、自動走行シミュレーションに活用する

いつもNAVI API/SDK × MATLAB®/Simulink®では、抽出された道路情報を幅広く、分析しやすいよう利用することが可能です。

自動運転の分野への活用を模索している方は、ぜひ「いつもNAVI API/SDK × MATLAB®/Simulink®」の利用をご検討ください。

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  <いつもNAVI API × MATLAB®活用事例>道路標高データを活用した車両走行シュミレーション|ゼンリンデータコム 安心で快適なモビリティ社会の実現に向けて、株式会社J-QuAD DYNAMICSは自動運転・車両運動制御を制御するソフトウェアを開発しています。 自動運転等の車両走行シミュレーションに欠かせない地図情報を取得するために導入いただいた「いつもNAVI API」について、導入の背景や使用感などを車両運動技術部の市瀬様に伺いました。 株式会社ゼンリンデータコム ​​​​​​​


ゼンリンデータコム編集部
ゼンリンデータコム編集部
あらゆる業界に役立つ、位置情報・住宅地図・物流配車管理・地図道路情報配信・屋内施設動態・インバウンドなど、ゼンリンデータコムの提供サービスに関わるノウハウやトレンドを様々な角度で情報発信してまいります。

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