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ーいつもNAVI API / SDK 活用事例1ー

【自動運転の未来を創る】「いつもNAVI API」の道路標高データを活用した車両走行シミュレーション

matlabMV
会社名 株式会社J-QuAD DYNAMICS
活用分野 車両走行シュミレーション
活用期間 1年1カ月
導入規模 4名
安心で快適なモビリティ社会の実現に向けて、株式会社J-QuAD DYNAMICSは自動運転・車両運動制御のための統合制御ソフトウェア開発を行ってます。
自動運転等の車両走行シミュレーションに欠かせない地図情報を取得するために導入いただいた「いつもNAVI API」について、導入の背景や使用感などを車両運動技術部の市瀬様に伺いました。

※上記 3D シーンはMathWorks社のRoadRunnerにて設計
導入前の課題

・車両走行のシミュレーション環境をより現実世界に近いものにしたい

・特に車両を走らせる上で重要な勾配を正確に再現したい

・特徴ある道を組み込んだ複数シーンで机上評価を繰り返したい

 

選定理由

自動車の制御設計では唯一無二のデファクトツールMATHWORKS社の「MATLAB®」*1にて車両走行シミュレーション用の走行シーンを生成するため「いつもNAVI API」を導入

 

導入の効果

・道路標高情報の取得により、橋やトンネル、高速JCTのシミュレーションが可能になった

・実車評価の半分以下の時間でシミュレーションでき、人的負担が大幅に軽減された

導入前の課題 正確な地図データを取り込みシミュレーションを行いたい

市瀬様
株式会社 J-QuAD DYNAMICS
車両運動技術部 第2技術室 技術2課
市瀬 茂徳氏
―御社の事業内容と、市瀬様が取り組まれている業務について教えてください。

市瀬氏:当社は日本生まれの自動車部品メーカーの4社により2019年に設立された新会社です。

主に自動運転に関するソフトウェアの開発を行っています。自動運転においてソフトウェアが制御する部分は、「認知」、「判断」、「操作」とさまざまですが、私は操作の部分にあたる車両運動制御に関する開発業務を担当しています。


―「いつもNAVI API」導入のきっかけを教えてください。

市瀬氏:
車両運動制御に関する設計、シミュレーションができるMATHWORKS社の「MATLAB®」を以前から導入・活用しておりました。
そこに御社の地図データ「いつもNAVI API」が連携可能になったとMATHWORKS社から聞きまして、すぐに連絡させていただきました。

―今回導入された「いつもNAVI API」はどういった目的で使用されているのでしょうか?

市瀬氏:シミュレーション上に実世界に近い道路環境を再現するのが目的です。

そのため「MATLAB®」上で「いつもNAVI API」を使って取得した道路データを、車両の走行や交通流をシミュレーションするソフト(CarMaker *2やVISSIM *3等)にインポートして利用してます。

これにより開発した制御ロジックの課題や効果の確認が実車を用いずとも可能となります。シミュレーション上では車両を自由に走らせることが可能なので、さまざまな走行シーン・走行条件での評価が可能です。
MATLAB®上で「いつもNAVI API」の道路データを読み込み

選定理由  他APIにはない豊富且つ精密なデータ

―「いつもNAVI API」導入の決め手と、抱えていた課題について教えてください。

市瀬氏:「いつもNAVI API」導入で、特に決め手になったのは道路標高の情報です。

地形情報はGoogleMapsPlatformやOpenStreetMapからも取得・再現できるのですが、道路標高の取得に課題があり、橋は谷底、トンネルは山の標高になってしまいます。

「いつもNAVI API」の道路標高データであれば、これまで再現が難しかった橋やトンネル、高速JCTなどが再現できると思いました。
六郷橋
六郷橋2
東京都大田区 六郷橋の走行シュミレーション

市瀬氏:車を走らせる上で勾配は重要な要素になります。道路は勾配と曲率を主な要素として形成されるので、その2つを再現するためにいつもNAVIを活用しています。

平面情報は普通の地図からも取得できますが、そこに勾配の情報が加わることでよりリアルな道路をシミュレーション上に再現できます。
その結果、実車評価に近い正確なシミュレーションが期待できます。

狭い範囲であれば、車に計測器をつけて自分で標高情報を取りに行くことも可能ですが、時間がかかりますし、トンネルなどGPSが切れてしまうところでは位置に紐づいた正しいデータが取れない等の問題がありました。

現地に行かなくても広範囲で信頼性のあるデータが得られる、というのは非常に大きなメリットです。

道路標高データ
道路標高データで、都市部のJCTや橋、山間のトンネルも正確に道路を再現

導入の効果  正確なシミュレーション環境構築と工数削減

―「いつもNAVI API」を実際に利用して、シミュレーションにどのような点が活きていますか?

市瀬氏:シミュレーションの効率が向上しました。

我々は、実車評価と机上評価を組み合わせて開発を実施してますが、正確な地図情報があると机上評価でテストできる範囲が増えます。

例えば名古屋-東京間の走行ルート数百kmのような長い距離をテストする場合、実車評価だと自ら運転するので時間も手間もかかりますが、机上評価であれば設定して結果を待つだけで済みます。

このように正確な地図情報は、リアルな環境の構築と評価工数の削減に繋がります。
―具体的にどのくらいの工数削減につながりましたか?

市瀬氏:単純な時間の観点ですと、300kmを実車評価する際は往路だけでも4時間は必要ですが、机上評価の場合は数倍速での評価も可能です。
それに加えて、実際に運転する必要もなくなりますので人的な負担も減ります。

そのため机上評価の場合は、実車評価における準備の時間のみで評価の工程を終えることができるイメージです。
横並び評価は難しいですが、4時間の運転を想定すると、机上評価は1時間程度の準備で終えられることもあります。

はじめの導入には工数がかかりますが、一度地図情報を取得する環境を構築すれば、他のエリアや道路を再現する事が容易となり、さらなる効率アップが可能であると考えます。


―そのほか机上評価のメリットについて教えてください。

市瀬氏:自動車の走る道はそれぞれ特徴を備えており、例えば新東名高速道路であれば直線が多く勾配変化が少ない、首都高速であれば曲率が多いといった点が上げられます。

このような道の特徴を抽出するために、実際に車を走行させて道路情報取得する必要が出てくるケースがあります。「いつもNAVI API」はこのような道の特徴の抽出にも役立っています。道の特徴を把握した上で、アルゴリズムを変えて自動運転の評価を繰り返すことで、さまざまなシーンにおける評価を積み重ねていけるのです。

加えて、車の走らせ方も制御方法や運転手によって異なり、重視されるポイントも乗り心地や燃費、安全性など異なるため、膨大なシーン/走らせ方/重視するポイントでの走行評価が必要となります。
これらを机上評価で行うことで、実車評価よりも効率的に実施可能となってます。

また安全性との兼ね合いで、実車では試せないような危険な条件での評価も可能になります。

今後の展望  特定の街を再現し、未来のためにより正確なシミュレーションを

―今後の要望や改善点について教えてください。

市瀬氏:使用していくとさらにリアリティを追求したくなる部分もあり、当初は標高情報があれば良いと思っていたのが、道幅や詳細な車線情報も取得したくなります。

こうした情報も取得できて、さらにシミュレーター環境の構築を自動化する機能があると、手を動かす部分が減ってより効率的になると感じます。

―逆に予想外に良かったポイントはございますか?

市瀬氏:はじめは想定していなかったものとしては、ルートマッチング*4の機能です。

計測データだけでなく理想的な走行ルートに近いルートを再現できるのは非常に便利です。

実車計測の場合は車線変更やカーブでのアウトインアウト走行など必ずしも車線内の決まった位置を走行している訳ではないため、計測結果から道路を再現するのに課題がありました。

「いつもNAVI API」では道の情報がある程度センターとして出ているので、シミュレーション上に道を再現しやすかったです。

あとはゼンリンデータコムの対応です。
「いつもNAVI API」に関する情報だけではなく、そこからの他ソフトとの連携に関する必要な情報もすぐに回答いただけましたし、保守の対応が非常に早くてそういった面でも信頼できました。

*4 ルートマッチング|リクエストパラメータの緯度経度の点列から移動した経路を推定し、マッチした自動車用道路リンクデータを返却する機能
ルートマッチング
―ありがとうございます。最後にこれから将来的に実現したいことがあればお聞かせください。

市瀬氏:今は一本道を作るのがメインですが、今後はより現実に近い道路環境を再現できたらと考えています。
車単体だけでなく、街全体の観点を取り入れるため、動的な時間帯毎の他車両群や信号機の点滅パターン、人流も考慮する必要があると考えます。

道路の静的な情報だけでなく、道路に紐づくこれら動的なデータが取得でき、かつ道路環境を再現できると良いと感じます。そこで静的な情報だけではなく、交通流や人の動きなどをふまえた動的な情報が取得できるようになることを期待しています。

「いつもNAVI API」のサービス詳細、導入についてお気軽にお問い合わせください。

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