
アフターコロナを見据えた「観光マーケティング」とは? プロセスと観光業の今後
新型コロナウイルスの流行から3年が経過し、水際対策の緩和や観光関連のキャンペーンなど、観光業を再び興そうとさまざまな取り組みが執り行われています。
アフターコロナ以降の観光業はこれまでのピンチを巻き返す機会となりますが、それだけに観光客獲得を目指したマーケティングをより考慮し、多くの顧客獲得を目指さなければなりません。
そこで今回は、アフターコロナ以降の「観光マーケティング」について説明します。
マーケティングのプロセスや、効率よく分析するために活用できるシステムなどを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
重要性を増す「観光マーケティング」とは?
まずは、「観光マーケティング」の概要について説明します。
目的の地域・場所に観光客を誘致するために行うマーケティングのこと
観光マーケティングとは、観光客誘致を目的に置いて実施されるマーケティング戦略のことを指します。
マーケティング戦略そのものは、販売業やエンターテインメントなど、多くの業種で行われていますが、観光マーケティングは「長期的な誘致に成功する」ためのマーケティングであることが特徴です。
観光業において一番問題になるのが、「一過性で集まってくる顧客だけでは長期的な顧客獲得につながらない」ということです。
一度来てもらって終わりではなく、来てもらった顧客に対して「またこの観光地に訪れた際は、この場所に来たい」と思ってもらうことを重要視し、そのために行うのが観光マーケティング戦略となります。
観光業界におけるマーケティングへの取り組みはまだまだ進んでいない
新型コロナウイルスの流行によって、観光事業が停滞してしまったことも理由のひとつですが、日本では観光業におけるマーケティング事業はあまり進んでいません。
最大の原因は、観光マーケティングの専門家の不足です。
観光マーケティングは、他の業界のマーケティング同様に、自社の競合にあたる観光サービスの分析をすることが大切です。
その分析に有効なフレームワークにSTPというものがあり、下記の内容で分析やPRを行うことが求められます。
- セグメンテーション(市場を細分化し分析)
- ターゲティング(狙う顧客層を明確化する)
- ポジショニング(自社の立ち位置に応じたPR)
しかし、観光業界のSTP分析はまだまだ新しい分野であるため、まずはSTPのスキルを持った人材の発掘育成が必要となり、結果的に旧態依然のPRしかできない状況が続いているのです。
観光マーケティングにおいて重要なプロセスとそのポイント
観光マーケティングにおいて重要なプロセスとそのポイントは、以下の6項目です。
市場分析→STPの観点から隙間となる観光事業の調査→実行後、マーケティングの評価と分析が主な流れとなります。
それぞれ解説します。
1.市場分析
まずは、市場分析を行います。
市場分析は、行っている企業も多いかと思います。
しかし、市場分析を行う際は、下記の点などを細かくチェックしなければいけません。
- 国内外の経済状況や世界情勢
- ターゲットにしたい顧客層が求めているもの
- 観光地がPRしたいサービスに他社と差がないか
など
市場分析は競合するサービスをチェックするだけでなく、まだ開拓されていない観光関連のサービスを発掘する上でも重要です。
しかし、市場分析は大幅な時間が必要となる業務であるため、手作業での分析は難しいといえます。
そのため、専門の分析ツールを利用して、経済状況や顧客層の人流をまとめるなど、効率よく分析行うスキルなども求められるでしょう。
2.セグメンテーション
セグメンテーションは、市場の細分化のことを指します。
観光マーケティングにおいても、市場が求めている分野を細分化し、誰もがわかりやすい状況に整理した上で分析などを行うことが大切です。
観光マーケティングでセグメンテーションする際は、目的に応じて下記のような顧客層のデータに細分化すると良いでしょう。
- 年齢
- 趣味
- 性別
- 出身地
項目別に細分化し、それぞれどのような観光サービスを求めているのか確認していきます。
3.ターゲティング
セグメンテーション後は、自分たちのPRしたい観光業に興味を持っているターゲット層を調査します。
どれだけの顧客を獲得したいかによって、ターゲティングをどこまで細かくするかは異なりますが、強く興味を持ってくれそうな顧客に積極的にPRするためには、こちらも時間をかけて調査しなければいけません。
できるだけ高確率に目標の顧客を獲得すべく、特定の人に強く興味を持ってもらうマーケティングを行い、段階的に広い範囲の顧客獲得を目指すという戦略もあります。
自社の状況なども踏まえ、長期的な計画を見据えながらターゲティングを行いましょう。
4.ポジショニング
ポジショニングは、自社のサービスがどのような位置づけにあるかを明確にした上でPR活動を行うマーケティング戦略です。
ポジショニングでは、「自社の競合である観光業よりどういった点が優れているか」を強くターゲットにアピールします。
直接は競合しない観光サービスであっても、観光業自体が非常に大きな市場のため、最終的には競合は避けられません。
それだけに、競合他社よりも優れた観光サービスを提供していることをわかりやすく説明し、ポジショニングの明確化がマーケティングには重要です。
5.マーケティングミックス(4P)
どのようにマーケティングを行うのかの骨子が確定したら、最後にマーケティングミックスを行います。
マーケティングミックスとは実行戦略のことで、下記4つのポイントを踏まえ、自社サービスをアピールしていきます。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
この4つの「P」の頭文字の構成要素からなるため、4Pともいわれます。
これまでの市場分析とSTP戦略によって、どの客層に自社のどのサービスを、いくらの値段でアピールするべきかを考慮し、どのような方法でユーザーに認知してもらうかなどの戦略を立て、PR活動を行っていきましょう。
6.実行と評価
マーケティングミックスを行い、実際にPR活動を実行したら、その後はPR結果の評価をします。
観光マーケティングにおいてもPDCAサイクルを回すことは大切です。
PDCAとは下記の頭文字を表したものです。
- Plan(市場分析・PRすべき顧客を細分化しターゲティング・実行戦略を行う)
- Do(実際にPRを行う)
- Check(訴求できた内容とできなかった内容を分析)
- Action(訴求できなかった内容を改善した上でプランニングPlanに戻る)
立案→実行→評価→改善を繰り返して、よりよいマーケティング戦略となるよう改善を繰り返し、顧客獲得につなげましょう。
コロナ禍を経て起きた観光業の変化と今後
新型コロナウイルスの流行によって、観光業は大きな変化を受けました。
ここからは、コロナ禍によって観光業がどのような影響を受けたのか、そして観光業は今後どうなっていくのかについて解説します。
新型コロナウイルスの流行が観光業にもたらした影響は多大
観光業が受けた影響は、マイナス面が大半です。
UNWTO(国連世界観光機関)の調査によると、2020年の国際観光客数は3億9,000万人となっています。
これは、2019年の14億7,000万人と比較して10億人以上の減少となり、比率にすると約73%も減ってしまいました。
訪日外国人数は2013年以降2019年まで増え続けるなど、観光業は好調に推移していたため、この打撃は非常に大きいです。
また、国内の旅行者数も下記のように減少しました。
- 2020年の国内宿泊旅行者数-前年比48.4%減
- 2020年の国内旅行消費額-前年比54.5%減
どのデータを見ても多くの観光客数の現象が確認されており、企業によっては経営自体が難しい状況に陥りました。
そんな大きなマイナスの影響を受けた観光業界だからこそ、マーケティング戦略を取り入れることによって、顧客を取り戻し、さらに新たな形で新規の顧客獲得を目指すことが大切となります。
参考URL:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 2020 年度事業報告
コロナ禍の現在、観光には新たなトレンドが生まれている
このような状況下で、観光業界は新たなマーケティング事業に取り組み、いくつかのトレンドを作り出しています。
とくに観光業における新たなトレンドとして注目されているのは、サステナブル・ツーリズムです。
サステナブル・ツーリズムとは、「持続可能な観光」の意味で、旅行先の地域文化および環境保全を考慮した旅行のことです。
サステナブル・ツーリズムには下記のようにいくつかの形態があります。
- リジェネラティブ・ツーリズム-再生型観光
- レスポンシブル・ツーリズム-観光客が責任を持つ観光
- アドベンチャー・ツーリズム-アクティビティ、自然、文化体験で構成される観光
このうち自然環境を打ち出した観光業が多い日本では、アドベンチャー・ツーリズムとの相性がよいと考えられます。
密でも気にならない日本の資源や自然を活かした新たな観光トレンドとして、観光マーケティングにおいても注目されています。
これからの観光マーケティングにおいてデータ分析が重要なカギとなる
ここまで、観光マーケティングの概要について説明しました。
観光マーケティングは顧客の誘致に繋げるのが最終ゴールとなるため、一人ひとりの需要をデータ分析した上で、需要のある観光業を把握しながら新しい観光周遊ルートの作成や、ニーズに応えたサービスの追加が必要です。
もちろんただ分析をするだけでなく、分析内容を4Pに基づいてPRしていくマーケティングミックス、実際にPRを行った後の評価と改善をした後、新たな戦略に繋げるPDCAを行うことも求められます。
これらの活動を行い、コロナ禍で減衰した観光マーケティングの復興を目指しましょう。
まとめ:観光マーケティングにデータを活用してより効果的な施策を
観光マーケティングは、「分析→STP戦略→実行戦略→実行→評価と改善」のサイクルを繰り返し、目標の顧客を長期的に獲得することを目指します。
観光業のさらなる振興のために必須となる観光マーケティングですが、市場分析とSTP分析では人の手だけではカバーしきれない膨大なデータや需要の調査が必要です。
このようなビッグデータを扱うことが必須の観光マーケティングでは、ビッグデータをひとまとめにして分析作業を行う専用ツールを利用しながら、効率的かつ効果的なマーケティング戦略を見つけ出すことが求められるでしょう。
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- 勤務地
[行動データ]
- 日時
- 出発地
- 到着地
- 宿泊地
- 移動数
- 滞在数
- 移動経路
- 交通手段
- 立ち寄り場所
- 滞在時間
- 来訪頻度
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