中大型トラックの高速道路での最高速度を時速90kmに引き上げ!法定速度や制限速度の違いも解説
高速道路や一般道路には最高速度が定められているのは周知の事実です。そんな最高速度ですが、2024年4月1日から中大型トラックを対象に高速道路の最高速度が引き上げられました。なぜこのタイミングで最高速度が引き上げられたのでしょうか?
そこで今回は、速度引き上げに関する概要から引き上げの対象となる車種、気になる安全面等を解説していきます。また、2024年問題にどのような影響を及ぼすのか解説していくので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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目次[非表示]
- 1.中大型トラックの高速道路での最高速度を時速90kmに引き上げ!
- 1.1.最高速度の引き上げに至った経緯
- 1.2.「最高速度」「法定速度」「制限速度」の違いは?
- 1.3.高速道路での車種別最高速度一覧
- 2.最高速度の引き上げの対象となる車種
- 2.1.大型貨物自動車(大型トラック)
- 2.2.8トン以上の中型トラック
- 2.3.トレーラーは対象外
- 3.最高速度の引き上げによる安全面は?
- 4.中大型トラックの最高速度引き上げによるメリット・デメリット
- 5.中大型トラックの最高速度引き上げによって2024年問題にどのくらいの影響があるの?
- 6.まとめ:高速道路の最高速度引き上げが運送時間の短縮や長時間労働の是正への影響も考えられる
- 7.27車種に対応!大型車対応のルート情報取得は「ZENRIN Maps API」がおすすめ
中大型トラックの高速道路での最高速度を時速90kmに引き上げ!
2024年2月27日に、中大型トラック(車両総重量8トン以上)の最高速度を引き上げる政令案が閣議決定され、4月1日から施行されています。
そもそも2023年12月22日に警察庁の有識者検討会によって、大型トラックの高速道路における最高速度を現行の時速80kmから90kmへ引き上げても問題ないとの結論が出たことで、今回の改正につながっています。1963年に日本で初めて高速道路が開通してから、大型トラックの速度規制が変更されたのは初めてです。
しかし、60年以上にわたって速度規制の変更がなかったにもかかわらず、なぜ今回最高速度が引き上げられたのでしょうか?ここでは、最高速度の引き上げに至った経緯や最高速度・法定速度・制限速度の違い、さらに高速道路における車種別の最高速度をご紹介しましょう。
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最高速度の引き上げに至った経緯
中大型トラックの最高速度引き上げが改正された理由として、2024年問題が大きく関わっています。2024年問題とは、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働において、960時間の上限規制と改正改善基準告示が適用されることで、輸送能力の大幅な低下が懸念されている問題です。
国が実施した「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、労働時間の削減に向けて事業者が具体的な対応を講じなかった場合、輸送能力は2024年度で14.2%、2030年度には34.1%も低下するという予測を立てています。
2024年問題の課題解決のひとつとして、高速道路の最高速度引き上げが検討されたのです。中大型トラックの最高速度を引き上げることで、輸送の効率化を図る考えになります。
「最高速度」「法定速度」「制限速度」の違いは?
道路には最高速度や法定速度、制限速度が設けられており、運転する際はこの速度を守らなくてはなりません。今回引き上げとなったのは最高速度になりますが、法定速度や制限速度とは何が異なるのでしょうか?
まず、最高速度は道路によって2種類に分かれます。ひとつは道路標識等でその最高速度が指定されている道路の最高速度、もうひとつは道路標識等で最高速度が指定されていない道路での政令で定めた最高速度です。
後者の政令で定めた最高速度は「法定速度」と呼ばれており、一般道路だと60km、高速道路だと100km(中大型トラックは80km→改正後は90kmに引き上げ)と定められています。
また、標識で示されている速度上限を「制限速度」と呼びます。道路交通法第23条では道路標識等で指定された最低速度以下で走行してはいけないと定められています。悪天候や渋滞、事故等の影響で減速しなくてはいけない場面以外は、制限速度を下回って運転すると違反になるので注意が必要です。
高速道路での車種別最高速度一覧
高速道路における最高速度は車種によって異なります。とくに速度指定されていない高速道路での車種別最高速度は以下のとおりです。
車種 |
最高速度(km/時) |
---|---|
大型乗用自動車 |
100 |
上記以外の自動車 |
80 |
他の車を牽引している場合 |
標識や標示で最高速度が指定されている場合はその指示に従う必要があります。例えば高速道路の一部区間では最高速度が110〜120kmに設定されているところもあります。
中大型トラックは「上記以外の自動車」に含まれていたため、これまでは80kmまでと制限されていました。しかし、今回の引き上げによって90kmまで速度を上げることができます。
最高速度の引き上げの対象となる車種
今回の改正によって高速道路での最高速度引き上げの対象となる車種は以下のとおりです。
大型貨物自動車(大型トラック)
大型貨物自動車は全長12m・全幅2.5m・全高3.8m以下で、車両総重量が11トン、最大積載量が6.5トン以上のトラックを指します。大型トラックは物流においても重要な役割を担っており、より多くの荷物を運搬する際に用いられています。
今回の改正によって最高速度が引き上げられた大型トラックですが、元々はトラックの事故を防ぐために他の車種よりも低い80kmに設定されていました。速度抑制のため、2003年から国土交通省が速度抑制装置(スピードリミッター)の装着が義務付けられています。
改正によって最高速度が引き上げられたものの、速度抑制装置の装着は現行のまま義務付けられた状態です。そのため、最高速度を90kmに引き上げても大きな影響はないと考え、引き上げに至りました。
8トン以上の中型トラック
中型トラックは全長12m・全幅2.5m・全高3.8m以下で、車両総重量が5トン以上11トン未満、最大積載量6.5トン以内のトラックです。車両総重量3.5トン以上7.5トン未満なら準中型免許で運転できますが、車両総重量7.5トン以上11トン未満の場合は中型免許を取得しなくてはなりません。
今回引き上げの対象となったのは、車両総重量8トン以上の中型トラックになります。8トン以上と限定されている理由は、速度抑制装置の取り付け対象が車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両だからです。中型トラックでも速度抑制装置が装着されている場合は引き上げの対象になります。
トレーラーは対象外
大型トラックと同様に大量の荷物を運搬できるトレーラーですが、今回の改正では引き上げの対象外となっています。警察庁が実施した有識者検討会の中で、関係者に対するヒアリングを行ったところ、トレーラーが80km以上で走行した場合の被牽引部の安全性能まで確認していないことが分かっています。
また、牽引するトラクタがないと自走できないトレーラーはその車両構造の特性や交通事故件数等を踏まえた上で、最高速度を引き上げる結論には至りませんでした。ただし、今後技術の進展等も考慮し、将来的に最高速度を引き上げる可能性も考え、事故の発生状況における分析等は行っていく意義があると示しています。
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最高速度の引き上げによる安全面は?
最高速度の引き上げによって懸念されるのは、安全面です。今回の引き上げによって高速道路での事故発生が増えてしまうのではないか?という不安の声も上がっています。
警察庁の有識者検討会では、上記でもご紹介したように8トン以上の中大型トラックには速度抑制装置の装着が義務付けられているため、90kmに引き上げたとしても安全性に大きな影響は出ないと結論付けています。
また、高速道路における大型トラックの交通事故件数も、年々減少傾向にあるため安全性に関しては問題ないと判断されました。
【高速道路における大型トラックの交通事故件数】
- 2003年~2007年の合計:4,037件
- 2008年~2012年の合計:3,362件
- 2013年~2017年の合計:2,921件
- 2018年~2022年の合計:1,927件
参考:警察庁「高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する提言」
中大型トラックの最高速度引き上げによるメリット・デメリット
中大型トラックの最高速度が引き上げられることで、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
メリット
最高速度が引き上げられるメリットとして、荷物が到着するまでの時間がこれまでよりも短縮し、業務の効率化につながる点が挙げられます。荷物を早く届けることで、ドライバーの長時間労働の改善につながる可能性もあるでしょう。
また、最高速度が引き上げられたことで乗用車との速度差が少なくなり、事故の発生原因が減ることも期待されています。高速道路では追い越しにより発生する事故も少なくありません。
2000年に軽自動車・自動二輪車の最高速度が80kmから100kmに引き上げられたのも、普通車と同様の速度にすることで追い越され・追い越しによる事故発生のリスクを減らすことが目的のひとつになっていました。
そのため、中大型トラックの最高速度引き上げも同様に、速度差が少なくなることでの安全効果が期待されています。
デメリット
メリットがある一方で、注意すべきポイントもあります。例えば、ドライバーは大切な荷物を素早く届けるために速度を上げて運転することになるため、運転時の緊張感がさらに増していくことです。
2024年4月から労働時間の上限が設けられたため、疲労の軽減が期待されています。しかし、速度引き上げによってこれまで以上に緊張感を持って運転することになると、余計に疲れが出たり精神的負担が増加したりすることが懸念されるでしょう。
また、これまで以上に迅速な納品や遠方への納品を求める荷主・元請け企業が増える可能性も懸念されています。ほかにも、速度が上がることで空気抵抗の影響が大きくなり燃費が低下するため、物流コストが増加してしまう可能性もあります。
中大型トラックの最高速度引き上げによって2024年問題にどのくらいの影響があるの?
今回の改正で最高速度が引き上げられることで、2024年問題にどのくらいの影響があるか気になる方もいるでしょう。実際にどれほどの影響が出たのかはまだ明確になっていないものの、トラックドライバーの業務には多少なりとも影響は出てくると考えられます。
例えば、速度を上げることでこれまでよりも早く荷物を届けられるようになれば、その分ドライバーの休憩時間を確保しやすくなったり、長時間労働の是正が期待できたりします。少しでもドライバーにとって働きやすい環境に改善されていけば、2024年問題の解決につながるのではないでしょうか。
ただし、いくら最高速度が引き上げられたからといっても、常にそのスピードを出せるわけではありません。そのため、2024年問題の根本的な解決を目指すためには、ほかにもさまざまな対策を講じていく必要があるでしょう。
例えば、ドライバーの勤怠状況を正確に把握するための労務管理システムや、的確な配送ルートを計画するITツールの導入等で業務効率化の大幅な改善が期待できます。
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まとめ:高速道路の最高速度引き上げが運送時間の短縮や長時間労働の是正への影響も考えられる
今回は、中大型トラックの高速道路における最高速度引き上げについてご紹介してきました。高速道路での最高速度が80kmから90kmに引き上げられることで、運送にかかる時間が短縮し、トラックドライバーの長時間労働の是正にも影響するといわれています。
しかし、最高速度を引き上げただけでは完全に2024年問題が解決するわけではありません。すでに直面している2024年問題を解決していくためには、物流業界全体で業務効率化や長時間労働の是正を目指すことが大切です。
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