
改正されるたびに厳しくなる荷主勧告制度の内容とは? 荷主は法案に準じて貨物を扱う必要がある
運送業界において重要な「荷主勧告制度」をご存知でしょうか?
「名前を聞いたことはあるけど、詳細は知らない」と、荷主勧告制度について理解していない方もいるでしょう。
運送業界に勤める方は、荷主勧告制度の概要を理解しておく必要があります。
なぜなら、荷主勧告制度は違反行為を取り締まるための法律で、概要を知らなければ荷主勧告を受けるリスクが生じるからです。
適切に業務を行うために、改正されるたびに厳しくなる荷主勧告制度について理解を深めておきましょう。
この記事では、荷主勧告制度の改正法について、詳しく解説します。
現在の荷主勧告制度を理解し、荷主は勧告を受けない環境づくりやドライバーが安全に運転できるような配慮や努力を心がけましょう。
目次[非表示]
- 1.荷主勧告制度の概要
- 2.荷主勧告制度は2014年により厳しくなった
- 3.現行法で荷主勧告をされる荷主の行為
- 3.1.1.非合理的な到着時間の設定
- 3.2.2.やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
- 3.3.3.積込み直前に貨物量を増やすなどの急な依頼
- 3.4.4.恒常的に発生する手待ち時間に対して改善措置を行わない場合
- 3.5.5.荷主が事業者に対し、違反行為を指示、強要する等
- 4.荷主勧告制度が厳しくなる中で企業に求められること
- 4.1.コンプライアンスの強化
- 4.2.ドライバーの待遇改善
- 5.まとめ:業務効率化を図り、ドライバーの安全管理や勧告を受けない環境づくりを
- 6.運送業務の効率化を目指すならゼンリンデータコムの「ロジスティクスサービス」
荷主勧告制度の概要
荷主勧告制度とは、運送業界における違反行為を取り締まるための法律です。
貨物自動車運送事業法第64条に規定される制度で、ドライバーの安全を守り危険業務を防ぐために過労運転・過積載運行・最高速度違反を防止します。
違反行為を行った場合は、荷主勧告によって荷主が処分されます。
荷主勧告がされる違反行為は、次の通りです。
・荷主が、実運送事業者に対する優越的地位や継続的な取引関係を利用して次の行為を行った場合
(ア) 非合理的な到着時間の設定
(イ) やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
(ウ) 積込み前に貨物量を増やすような急な依頼
(エ) 荷主管理に係る荷捌き場において、手待ち時間を恒常的に発生させているにもかかわらず、実運送事業者の要請に対し通常行われるべき改善措置を行わないこと
・実運送事業者の違反に関し、荷主の関係者が共同正犯若しくは教唆犯又は強要罪で公訴が提起された事例その他荷主の指示等が認められた事例
つまり、ドライバーに無理な仕事を押し付けた場合は、荷主勧告を受ける可能性が高いです。
荷主勧告に至らない違反行為があった場合には「協力要請書」が送られ、荷主の関わりが認められる場合は「警告書」が送られます。
協力要請書を受け取った荷主が、3年以内に同一の違反をした場合は「警告書」が送られ、更に3年以内に同一の違反を行うと「荷主勧告」の対象です。
荷主勧告を受けた事業者は名前と、違反内容が公表されるため、社会からの信頼が低下します。
運送業を行う際には、荷主勧告の概要を理解して勧告を受けないよう注意しましょう。
荷主勧告制度は2014年により厳しくなった
荷主勧告制度は、2014年の時点でより厳しくなりました。荷主勧告制度によって勧告される違反行為が増えたことが要因です。
国土交通省が2014年4月1日より施行した法改正により、荷主勧告制度がどのように変わったのか確認しておきましょう。
2008年4月から「過労運転」および「最高速度違反」にも運用が拡大されていた
そもそも荷主勧告制度は、2008年4月から「過労運転」および「最高速度違反」にも運用が拡大されています。
しかし違反をし、荷主勧告をするためには、「警告的内容の協力要請書」が必要なことが問題として挙げられていました。
警告的内容の協力要請書が送られる流れは下記のとおりです。
- 1回目の違反では「一般的内容」の協力要請書が送られる
- 3年以内に同一の違反をした場合にのみ「警告的内容」の協力要請書が送られる
一般的内容の協力要請書が送られて、3年以内に同一の違反を犯した場合のみ荷主勧告が適用されたため、勧告までのスピード感が問題だったのです。
2014年の法改正に伴い、勧告までのスピードを迅速化し、法令違反を取り締まる制度が拡充しました。
2014年に厳しくなった荷主勧告制度の内容
2014年の法改正によって、厳しくなった荷主勧告制度の内容は次の通りです。
- 荷主勧告に該当しない違反だが、荷主の関わりが認められる場合は、協力要請書の通達を飛ばし警告書を通達
- 荷主勧告に該当する違反をした場合、協力要請書・警告書の通達を飛ばして荷主勧告が可能
法改正以前の2008年から施行されていた荷主勧告制度では、1回目の違反で一般的内容の協力要請書、2回目の違反で警告書内容の協力要請書が送られていました。
2回目の警告書内容の協力要請書が送られて、3年以内に同一の違反を犯した場合に荷主勧告が行われたため、スピード感に問題があったのです。
しかし、2014年の法改正によって、荷主勧告に該当する違反は協力要請書の通達をせずに、いきなり警告書の通達や荷主勧告ができるようになりました。
2019年7月にも新制度がスタート
荷主勧告制度は2019年7月にも新制度が施行されています。2019年より始まった法改正の内容は、次の通りです。
- 荷主への配慮義務を新設
- 荷主の勧告制度が拡充
- 違反行為をした荷主へ国土交通大臣が働きかけなどを行う
法改正に伴い、荷主はドライバーへ安全に運転できるよう配慮する義務が新設されました。また、荷主への勧告制度が拡充され、違反行為を行った事業者の名前と勧告内容が公表されます。
更に、国土交通大臣が違反原因となる行為の疑いがある事業者に対して、コンプライアンス保全のために荷主の配慮が必要不可欠であることを働きかけます。
荷主への理解を呼びかけ、配慮義務と勧告制度を充実させることにより、違反行為を減少させる法改正です。
現行法で荷主勧告をされる荷主の行為
2014年と2019年の法改正により、コンプライアンスが強化された荷主勧告制度ですが、具体的にどのような行為が勧告対象となるのか理解しておかなければいけません。
現行法で荷主勧告をされる荷主の行為は、次の通りです。
- 非合理的な到着時間の設定
- やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
- 積込み直前に貨物量を増やすなどの急な依頼
- 恒常的に発生する手待ち時間に対して改善措置を行わない場合
- 荷主が事業者に対し、違反行為を指示、強要する等
それぞれの違反行為を確認して、荷主勧告をされないよう注意しましょう。
1.非合理的な到着時間の設定
非合理的な到着時間を設定した場合は、違反行為と見なされて勧告対象となります。
荷主の都合で積荷の準備が遅延したり、出発時間が遅延したりと、荷主が関与している原因で予定到着時間が遅れる要因はさまざまです。
しかし、予定到着時間を変更せずに、ドライバーに予定通りのスケジュールで運転を強要するケースがあります。
非合理的な到着時間を設定して、ドライバーに無理なスピード運転を強要する行為は勧告対象です。
ドライバーが難しいと判断した場合は、到着時間の変更や指示書の変更を検討してください。
2.やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
やむを得ない遅延に対してペナルティを設定した場合、違反行為と見なされて勧告対象となります。
積荷に時間がかかったり、配送地点での荷主が行う荷卸しに時間がかかったりと、配送時間が遅延するトラブルが起こることもあります。
天候が原因で渋滞したり、安全運転を心掛けたりと、スケジュール通りに運転できないケースもあるでしょう。
しかし、中には「遅延した分は商品を買い取る」など、遅延に対するペナルティを設けている荷主が存在します。
ペナルティを設けると、スケジュールを守るために無理な運転をして、速度違反や過労運転につながり危険です。
やむを得ない遅延の場合は、ペナルティを設定せずにドライバーへの配慮を忘れないようにしましょう。
3.積込み直前に貨物量を増やすなどの急な依頼
積込み直前に貨物量を増やすなどの急な依頼は、荷主勧告される要因となるため注意してください。
出発日に急遽、貨物量を増やして配送するよう依頼をすると、当初予定していた積載量を超えてしまいます。
車両の積載量や軸重などの制限値を超えないよう、配慮して貨物量を決めているため、急な貨物量の増加依頼はやめましょう。
ドライバーが積込みを断った際に、取引解除をチラつかせて脅す行為も禁止です。
運送業の安全を守るために、ドライバーが快く配送できる状態で依頼をしてください。
4.恒常的に発生する手待ち時間に対して改善措置を行わない場合
恒常的に発生する手待ち時間に対して、改善措置を行わない荷主も勧告対象です。
毎日2時間や3時間など、ドライバーの手持ち時間が発生しては、拘束時間が長くなり改善基準告示の限度時間を超えてしまいます。
トラブルによって稀に発生する手持ち時間であれば問題ありませんが、恒常的に発生する手持ち時間は改善しなければいけません。
ドライバーからも手持ち時間の改善を相談された際には、真摯に受け止めて業務効率の改善を試みてください。
手持ち時間を改善する意思がない場合は、荷主勧告をされてしまうので要注意です。
5.荷主が事業者に対し、違反行為を指示、強要する等
荷主が事業者に対し、違反行為を指示、強要する等の行為は勧告対象です。
たとえば、積載量を超えている車両の運転を強要したり、スケジュールに間に合わせるために、休憩なしの長時間走行を強要したり、基準告示の限度時間を超える拘束を指示したりした場合も違反行為です。
道路交通法の違反を指示、強要するなど、ドライバーに対して違反行為を促すと、荷主勧告をされるため決してしないでください。
荷主勧告制度が厳しくなる中で企業に求められること
荷主勧告制度が厳しくなる中で、どのような改善が必要か悩んでいる方もいるでしょう。
荷主勧告制度に対処するために、意識すべきポイントは次の通りです。
それぞれのポイントを意識して、勧告を受けない労働環境を整えてください。
コンプライアンスの強化
荷主勧告を受けないために、コンプライアンスの強化が求められます。
ドライバーの長時間運転や短時間の休憩、無休憩による過労運転は、事故につながり危険です。
肉体労働であるドライバーの安全を確保するため、コンプライアンスの強化を徹底しましょう。
法定通りの時間内労働を心掛け、無理なスケジュールは廃止します。
ドライバーが安全に業務を遂行できる環境を整えて、荷主勧告を受けないホワイト企業を目指してください。
ドライバーの待遇改善
荷主勧告制度に対処するため、ドライバーへの待遇を改善しましょう。
ドライバーが過労運転を行う原因として、深刻な人材不足が挙げられます。
ドライバーが不足している運送業界では、1人のドライバーにかかるタスクが多く、休憩なしでの過労運転を強いられているのが現状です。
ドライバーの人員を補充できれば、休憩や休日を増やして、疲労を軽減できます。
新規ドライバーを獲得するためにも、待遇を改善しましょう。
待遇改善によってドライバーの労働時間が軽減できれば、荷主勧告をされるリスクが軽減できます。
まとめ:業務効率化を図り、ドライバーの安全管理や勧告を受けない環境づくりを
荷主勧告制度に対処するため、業務を効率化してコストダウンを図りましょう。
業務を効率化してコストダウンができれば、運送業務にかかる時間や経費を削減できます。
効率的に配送を完了させることで、ドライバーの過労運転を防止でき、荷主勧告のリスクも軽減できるでしょう。
またコストダウンによって、人員を補充したりシステムを導入したりできれば業務効率向上に向けた改善案を講じられます。
荷主の方は、勧告を受けないようコンプライアンスを強化して、ドライバーへの待遇を改善してください。
運送業務の効率化を目指すならゼンリンデータコムの「ロジスティクスサービス」
運送業務の効率化を目指すなら、ゼンリンデータコムの「ロジスティクスサービス」をご検討ください。
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配送先の詳細情報や住所のクレンジングもできるため、運送業務をより効率化させられます。
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