
Google I/O 2023 発表総まとめ|Google Maps Platform 最新情報
2023年5月10日(太平洋時間)にGoogleの開発者向けイベント「Google I/O 2023」が開催されました。
新しいデバイスやAI関連の製品などが発表され、注目度の高いイベントだった「Google I/O 2023」。
その中から本記事では「Google Maps Platform」に関連するプロダクトアップデート情報に絞って解説します。
目次[非表示]
- 1.7つのプロダクトアップデート概要
- 2.キーワードは「没入感」! 2つの新API機能
- 2.1.①Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles(試験版)★Update★ 2023年10月27日(太平洋時間)より一般提供開始
- 2.2.②Aerial View API(Preview版)★Update★ 2023年8月8日(太平洋時間)より一般提供開始
- 3.「Photorealistic 3D Tiles」と 「Aerial View」の違い
- 4.開発者を支援する2つのAPI機能
- 5.意思決定を後押しする3つのAPI機能
- 5.1.⑤Maps JavaScript API Data-driven styling for boundaries
- 5.2.⑥Maps JavaScript API Advanced Markers
- 5.3.⑦Routes API
- 6.Google I/O 2023 総括
- 7.Google Maps Platform導入のご相談はゼンリンデータコムへ!
7つのプロダクトアップデート概要
Google I/O 2023の「Google Maps Platfom」関連の発表は以下の通りです。
ローンチステージ |
API機能名 |
試験版 |
①Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles |
Preview版 |
★Update★ 2023年8月8日(太平洋時間)より一般提供開始 |
一般提供 |
|
特に①Map Tiles API Photorealistic 3D Tilesと②Aerial View APIは手軽に3D地図や3D地図ソースの空撮動画を活用できる新しいAPIとなっています。
視覚的に地理的情報や建物とその周辺情報などを提供でき、ユーザーは臨場感溢れる地図体験が可能となっています。
■GMPのローンチステージについて
https://developers.google.com/maps/launch-stages
キーワードは「没入感」! 2つの新API機能
本イベントで頻出していたキーワードが「没入感」。
まずは「没入感」を感じられる新しい体験を提供する「Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles」と「Aerial View API」について、どのようなAPIなのか、どのような活用方法があるのか解説していきます。
①Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles(試験版)★Update★ 2023年10月27日(太平洋時間)より一般提供開始
「Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles」の東京の例。こちらは映像だが実際は視点の調整が可能
「Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles」はGoogle Earthと同じ高解像度3D地図ソースを利用した3Dメッシュモデルが、日本を含む49ヵ国 2,500以上の都市※1で利用できるAPI機能※2です。
OGC標準規格を採用しているため、3D地図タイルのレンダリングには、独自のレンダラーや他の互換性のあるレンダラー、CesiumJSやDeck.glなどのオープンソースライブラリをご使用いただけます。
歩行者目線や上空から下方に移動するなどあらゆる視点に調整が可能なため、都市計画・不動産開発や仮想ガイド付き地図ツアーなどへの活用に加えて、ゲームやデジタルツインのような架空世界を構築するシーンでの活用が考えられます。
臨場感あふれるエンターテイメントの提供やユーザーのエンゲージメント向上にも寄与するであろう注目のAPI機能です。
※1:2023年6月現在の情報です
※2:本API機能は試験版
■詳細仕様
https://developers.google.com/maps/documentation/tile/3d-tiles-overview
■対応地域
https://developers.google.com/maps/coverage#countryregion-coverage
■デモサイト
https://3d-tiles.web.app/#intro
■料金
試験版提供の間は無料。一般提供開始のスケジュールおよび料金は未定
★Update★ https://developers.google.com/maps/documentation/tile/usage-and-billing
②Aerial View API(Preview版)★Update★ 2023年8月8日(太平洋時間)より一般提供開始
ロサンゼルスのドジャー スタジアムからシカゴのアドラー プラネタリウムまで、全米各地の構造物を俯瞰で表現
「Aerial View API」は場所・ランドマーク・名所※3の3D地図ソースの空撮動画をアプリへ統合する機能です。
Google Earthと同じ高解像度3Dマップソースで構築された映画のような動画に、プログラム経由でアクセスが可能となります。
先に紹介した「Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles」は3Dメッシュモデルでの提供でしたが、「Aerial View API」は動画としての提供となり、ユーザーや開発者が自分で3Dの角度の調整やパン・ズームなどができません。
カスタマイズ性が低い分、APIを呼び出すだけで簡単に実装ができ開発の手間がかからないため、高解像度の空撮動画をすぐに利用したい場合に有効です。
例えば不動産紹介など画角の調整があまり必要のないシーンや、ドローン空撮の代替などに利用できます。
※3: 2023年6月現在、Aerial View(Preview版)では米国の住所のみに対応しており、今後対応する地域を拡大予定
■詳細仕様
https://developers.google.com/maps/documentation/aerial-view/overview
■料金
SKU: Aerial Viewに対する課金(URLを返却するgetVideoの呼び出し毎)
https://developers.google.com/maps/documentation/aerial-view/usage-and-billing#pricing-for-product
Preview版提供の間は無料。一般提供開始のスケジュールは未定、かつ上記の料金は変更となる可能性があります。
★Update★ 最新の対応地域については下記のドキュメントページをご確認ください
■対応地域
https://developers.google.com/maps/documentation/aerial-view/overview#coverage_areas
「Photorealistic 3D Tiles」と 「Aerial View」の違い
「Photorealistic 3D Tiles」と「Aerial View」の違いや特徴をまとめました。
下記を参考に、利用用途や目的に合わせてAPI機能を選択してください。
Map Tiles API Photorealistic 3D Tiles |
Aerial View API |
|
説明 |
タイルとして提供される3Dメッシュモデルへのアクセス |
事前にレンダリングされた3D地図ソースの空撮動画へのアクセス |
地理的区域 |
広区域(街区、近隣地域、市区町村、都道府県、国、全世界) |
1つのスポット/住所 |
視点 |
あらゆる角度(歩行者目線、任意の高さ、上空から下方への移動など)から見た鳥観図 |
固定の高さから見た鳥観図 |
ユーザー操作 |
パン・ズーム・回転などの操作は可 |
パン・ズーム・回転などの操作は不可 |
カスタマイズ性 |
高 |
低 |
実装所要日数の目安 |
数週程度 |
数日程度 |
レイテンシ |
低~中 |
低 |
対応地域 |
日本を含む49ヵ国2,500以上の都市 |
米国の住所 ※順次拡大予定 |
開発者を支援する2つのAPI機能
コスト削減や管理・制作にかかる工数削減など、開発者のニーズに答えるAPI機能がPreview版リリースされました。
③Maps Datasets API(Preview版)
シアトルの緑地がマップ上の場所として表示され、実際の場所における緑地の密度を分かりやすく示している(Data-driven styling for datasets機能)
「Maps Datasets API」は地理空間データ(ポリゴン、ポリライン、POI)をCloud Console上でアップロード・保存・管理を行い、APIで利用するための機能です。
これまで地理空間データを可視化するには、大規模なデータセットを管理・保存する必要があり、インフラストラクチャー費用が嵩むという課題がありました。
また、データ読み込みの遅延やパフォーマンス低下などが起きるケースもありました。
本API機能によって、開発者はインフラストラクチャー費用の削減に加えて、データアクセスの管理や地理空間データの更新を常時どこからでも行えるようになるメリットがあります。
※サポート対象のデータ形式はCSV, GeoJSON, KMLファイル
※アップロードした独自データにカスタムスタイルを適用させて地図上に表示できる、
Maps JavaScript API Data-driven styling for datasets(Preview版)でも利用可能
■詳細仕様
https://developers.google.com/maps/documentation/datasets/overview
https://developers.google.com/maps/documentation/javascript/dds-datasets/overview
■デモサイト
https://storage.googleapis.com/gmp-maps-demos/data-driven-styling-datasets/index.html
■料金
Preview版提供の間は無料。一般提供開始のスケジュールおよび料金は未定
④Maps JavaScript API Web Components(Preview版)
開発者が Google Maps Platform を利用するための新しい方法として、「Web Components」 の提供が開始されました。
Web Componentとは、開発者がHTML、CSS、および JS をカスタムの再利用可能なHTML要素にカプセル化できるようにするW3C標準のことです。
地図表示やAdvanced MarkerのWeb Componentを利用し、Maps JavaScript API にある既存の地図機能を再利用することができます。
カプセル化したHTML要素を使用して複雑なコーディングを簡素化できるため、開発者は高品質な地図を簡単に構築できるようになり、地図作成にかかる時間を大幅に短縮することが可能になりました。
※地図スタイルの変更とAdvanced Markerのご利用には、Google Cloud ConsoleにてMap IDの作成が必要
▼地図表示のHTMLコードサンプル
▼Advanced Marker利用時のHTMLコードサンプル
意思決定を後押しする3つのAPI機能
最後に一般提供が開始されたAPI機能について解説します。
3つのAPI機能は、情報量の増加やデータの可視化など、ユーザーが十分な情報に基づいて意思決定できるように支援するAPI機能としてリリースされています。
⑤Maps JavaScript API Data-driven styling for boundaries
「Maps JavaScript API Data-driven styling for boundaries」を利用して、郵便番号別に配送料を可視化した例
「Maps JavaScript API Data-driven styling for boundaries」は、Googleが提供する行政界ポリゴンを地図へ重畳させるAPI機能です。
自社データや地理空間データなどを地図上に可視化することで、重要な情報を視覚的に分かりやすく伝えることができ、迅速な意思決定に役立ちます。
Maps JavaScript APIをご利用中の場合は無償、開発不要、維持・更新が不要な機能となっていますので、自社でどういう活用法があるのか、検討してみてはいかがでしょうか。
活用方法やユースケースについてはGoogle Maps Platform「行政界ポリゴン」活用術の資料でご紹介していますので、参考にしてください。
■詳細仕様
https://developers.google.com/maps/documentation/javascript/dds-boundaries/overview
■対応地域
https://developers.google.com/maps/documentation/javascript/dds-boundaries/coverage
■デモサイト
https://storage.googleapis.com/gmp-maps-demos/data-driven-styling/index.html#visualize-data?country=Japan
■料金
通常のSKU: Dynamic Maps JavaScript API(マップロード毎)
⑥Maps JavaScript API Advanced Markers
次に「Maps JavaScript API Advanced Markers」は、Maps JavaScript APIにおいて、ピンのデザインのカスタマイズ向上やズームやパンのパフォーマンスを最適化する機能となります。
以下がカスタマイズ例です。
デフォルトの赤いマーカーの色とアイコンの変更
企業ロゴのSVG画像を使用したアニメーションマーカー
荷物や車両の状態に応じたマーカーの色の変更
デフォルトの赤いピンの色を変更できるだけでなく、アイコンをカスタマイズしたり、SVGやPNGを直接使用したマーカーやユーザ操作に対応するマーカーの作成など、柔軟性が高くなりました。
たとえば飲食チェーンがブランド毎にアイコンを設定して地図上で可視化できるようにする、宅配のシーンで配達完了でマーカーの色が変わるなど、活用の幅が増えています。
また、これまでは多くのマーカーが地図上に落ちている場合、ロードに時間がかかりズームやパンの操作をスムーズに行うことが難しかったのですが、本API機能では従来のマーカーよりも最大で66%高速でロードできるようになりパフォーマンスが大幅に向上しています。
■詳細仕様
https://developers.google.com/maps/documentation/javascript/advanced-markers/overview
■デモサイト
https://storage.googleapis.com/gmp-maps-demos/advanced-markers/index.html#marker-rows
■料金
通常のSKU: Dynamic Mapsに対する課金(マップロード毎)
⑦Routes API
「Routes API」は、高度なルート検索やカスタマイズが可能なAPI機能です。
既存のDirections API/Distance Matrix APIのアップグレード版のAPI機能となります。
「Routes API」については、新機能リリース「Routes API」の記事で詳細を説明していますので、ご確認ください。
Google I/O 2023 総括
Google I/O 2023では、3D地図に関するGoogle Maps PlatformのAPI機能について厚く紹介されました。
以前から提供されている2D地図・高解像度の衛星画像・歩行者視点のストリートビュー表示機能といった要素に最新のAIとコンピュータービジョン技術を活用することで、従来の地図の枠組みを超えた「没入感」体験機能の提供が実現しています。
また、地図のカスタマイズやルート検索、地図構築を支援する機能が拡張されたことで、開発者はユーザーにとって満足できるような情報量を増やすだけではなく、より効率的に期待される新しい体験を構築できるようになります。
いずれの機能もユーザーの地図ベースの情報に基づく意思決定をサポートしたり、結果としてエンゲージメント向上に非常に役立つ機能と言えるでしょう。
今後どのように活用されていくのか注目すると同時に、Googleのさまざまな最新技術と融合した更なる進化に期待したいと思います。
■Google I/O 2023 発表について(Google Cloudブログ(日本語))
https://cloud.google.com/blog/ja/products/maps-platform/google-io-preview-introducing-new-3d-imagery-map-customization-and-routing-products
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