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スマートシティの国内・海外事例7選!成功のポイントや課題も解説します

近年、人口減少や高齢化、インフラの老朽化など、多くの都市が複雑な課題に直面しています。

こうした状況を打破する切り札として、「スマートシティ」への期待が高まっています。最先端のICTを活用して、市民の暮らしをより豊かに、そして都市機能をより効率的にしようという取り組みです。

この記事では、スマートシティの基本的な概念から、国内外の具体的な成功事例、そして実現に向けた課題や成功のポイントまでを網羅的に解説します。自社の事業や自治体の政策立案のヒントを探している方は、ぜひ参考にしてください。

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目次[非表示]

  1. 1.スマートシティとは?注目される背景を解説
    1. 1.1.スマートシティの定義と目的
    2. 1.2.なぜ今スマートシティが求められるのか?
  2. 2.【分野別】国内のスマートシティ先進事例
    1. 2.1.【防災・インフラ】会津若松市:都市OSを活用した市民中心のまちづくり
    2. 2.2.【観光・交通】香川県高松市:データ連携で観光と防災を強化
    3. 2.3.【医療・福祉】兵庫県加古川市:市民の安全と暮らしやすさを向上
    4. 2.4.【実証実験都市】静岡県裾野市:トヨタが手掛ける「Woven City」
    5. 2.5.【市民協働】静岡県浜松市:官民共創で市民のQoL向上を目指す
  3. 3.世界のスマートシティ事例から学ぶ
    1. 3.1.【総合型】スペイン・バルセロナ:IoT活用で都市機能を最適化
    2. 3.2.【オープンデータ】米国・サンフランシスコ:官民連携で行政サービスを改善
  4. 4.スマートシティ実現に向けた3つの主要な課題
    1. 4.1.推進体制の構築とステークホルダーの合意形成
    2. 4.2.データ連携基盤の整備と利活用
    3. 4.3.事業継続性の確保とマネタイズ
  5. 5.スマートシティを成功に導くためのポイント
    1. 5.1.明確なビジョンと解決すべき課題の特定
    2. 5.2.住民の理解と参画を促す仕組みづくり
    3. 5.3.スモールスタートと機動的な開発
  6. 6.まとめ

スマートシティとは?注目される背景を解説

スマートシティという言葉を耳にする機会は増えましたが、その定義や目的を正確に理解しているでしょうか。

ここでは、スマートシティがなぜ今、これほどまでに注目を集めているのか、その背景と合わせて解説します。

スマートシティの定義と目的

スマートシティとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった最先端技術を活用して、都市が抱えるさまざまな課題を解決し、市民の生活の質(QoL)の向上と持続可能な都市経営を目指す新しい都市のあり方です。

具体的には、エネルギー、交通、医療、防災、行政サービスといった個別の分野のデータを連携させ、都市全体の最適化を図っています。

これにより、環境に配慮しつつ、市民一人ひとりにとって快適で安全な生活環境を提供することが、スマートシティの大きな目的です。

なぜ今スマートシティが求められるのか?

スマートシティが世界的に推進される背景には、多くの国や都市が共通して抱える課題があります。

課題分類 

具体的な課題内容 

社会構造の変化 

人口減少、少子高齢化、労働力不足 

都市インフラ 

公共交通の維持、水道・道路など

インフラの老朽化 

環境・エネルギ 

CO2排出量の削減、自然災害の激甚化、

エネルギーの安定供給 

市民ニーズの多様化 

多様なライフスタイルへの対応、

行政サービスのオンライン化 

これらの課題は相互に複雑に絡み合っており、従来の縦割り行政や個別最適の考え方だけでは解決が困難になっています。

そこで、分野横断的なデータ連携を通じて、都市全体を一つのシステムとして捉え、効率的な解決策を見出すスマートシティのアプローチが不可欠となっているのです。

【分野別】国内のスマートシティ先進事例

国内のスマートシティ先進事例

日本国内でも、各都市が地域の実情に合わせたユニークなスマートシティを展開しています。

ここでは、特に参考となる先進的な事例を分野別に紹介します。

自治体名 

主な取り組み分野 

特徴 

香川県高松市 

防災、観光、交通 

共通プラットフォームによる

分野横断的なデータ連携 

兵庫県加古川市 

見守り、福祉、交通 

市民の安全確保と交通弱者支援

静岡県裾野市 

自動運転、AI、ロボット 

実世界の環境で先端技術を

検証する実証都市 

【防災・インフラ】会津若松市:都市OSを活用した市民中心のまちづくり

福島県会津若松市は、早くからスマートシティに取り組んできた都市の一つです。最大の特徴は、「都市OS(データ連携基盤)」を導入している点にあります。これは、行政や民間企業が持つ様々なデータを集約し、共有・活用するためのプラットフォームです。

市民は「会津若松+(プラス)」というポータルサイトを通じて、除雪車の現在地情報やごみ収集日の通知、避難所の開設状況といった多様なサービスをワンストップで受け取ることができます。

市民の同意(オプトイン)に基づいてデータを活用することで、個々のニーズに合わせた最適なサービスを提供し、市民のQoL向上を実現しています。

参考:https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015121000042/

【観光・交通】香川県高松市:データ連携で観光と防災を強化

香川県高松市は、防災、観光、福祉、交通など、多様な分野のデータを連携させる共通プラットフォームを構築しています。

これにより、例えば、河川の水位や潮位、避難所の開設情報などをリアルタイムで集約し、市民や観光客に提供することで、災害への迅速な対応を可能にしています。

また、観光分野では、オープンデータを活用して新たな観光サービスの創出を促すなど、データに基づいた地域経済の活性化にも取り組んでいます。

参考:https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/shinotorikumi/machidukuri/smartcity/index.files/jigyougaiyou20230922.pdf

【医療・福祉】兵庫県加古川市:市民の安全と暮らしやすさを向上

兵庫県加古川市は、「安全・安心なまちづくり」をテーマにスマートシティを推進しています。

具体的には、市内各所に見守りカメラを設置するほか、高齢者や子どもの見守りサービスを展開し、市民が安心して暮らせる環境を整備しています。

さらに、自由返却型の電動レンタサイクルの導入や、オンデマンド交通の実証実験を行うなど、高齢化社会における交通弱者の移動手段確保にも力を入れており、市民の暮らしやすさ向上に貢献しています。

参考:https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kikakubu/jouhouseisakuka/ict_1/1535023961752.html

【実証実験都市】静岡県裾野市:トヨタが手掛ける「Woven City」

「Woven City(ウーブン・シティ)」は、トヨタ自動車が静岡県裾野市に建設を進める実証都市です。

ここでは、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム、AIといった先端技術を、人々が実際に生活するリアルな環境で導入・検証します。

特定の企業の主導により、ゼロから最先端の技術を実装した街を創り上げるというアプローチは、壮大な実験と言えます。

2025年の一部実証実験開始が予定されており、ここから生まれる新たな技術やサービスが、世界中の都市に展開されていくことが期待されています。

参考:https://www.woven-city.global/jpn/about/

【市民協働】静岡県浜松市:官民共創で市民のQoL向上を目指す

静岡県浜松市は、「市民のQoL(生活の質)向上」と「都市の最適化」を目標に掲げ、官民共創によるスマートシティを推進しています。

デジタル・ファースト宣言のもと、行政だけでなく、地域の企業や大学、そして市民が一体となって、地域の課題解決に取り組む体制を構築しているのが特徴です。

「オープンイノベーション」や「市民起点」といった視点を重視し、多様なプレイヤーを巻き込むことで、市民が本当に必要とするサービスを生み出すことを目指しています。

参考:https://www.mlit.go.jp/scpf/archives/docs/event_seminar240318_hamamatsu.pdf

世界のスマートシティ事例から学ぶ

世界のスマートシティ事例から学ぶ

スマートシティの取り組みは、世界中の都市で加速しています。

海外の先進事例から、日本のまちづくりにも応用できるヒントを探ります。

都市名 

 

主な取り組み 

特徴 

バルセロナ 

スペイン 

スマートパーキング、スマートゴミ収集 

IoTセンサーを活用した都市インフラの効率化 

サンフランシスコ 

米国 

行政データの無償公開(オープンデータ) 

官民連携による新たなサービス創出 

【総合型】スペイン・バルセロナ:IoT活用で都市機能を最適化

スペイン・バルセロナ市は、スマートシティの先進都市として世界的に有名です。市全体をカバーする無料Wi-Fi網をインフラとして整備し、その上で多様なIoTサービスを展開しています。

例えば、ゴミ収集箱にセンサーを設置して、ゴミの量が一定に達した箱だけを効率的に回収するシステムや、センサーで駐車場の空き状況を検知し、ドライバーを空きスペースへ誘導するスマートパーキングなどを導入しました。

これらの施策により、行政サービスの効率化とコスト削減、市民の利便性向上を同時に実現し、多くの都市のモデルとなっています。

参考:https://iotnews.jp/smart-city/140315/

【オープンデータ】米国・サンフランシスコ:官民連携で行政サービスを改善

米国サンフランシスコ市は、行政が保有する膨大なデータを「オープンデータ」として無償で民間に提供する取り組みで知られています。この目的は、地域の企業やNPO、個人の力も借りながら、行政サービスの改善を加速させることです。

例えば、公共交通のリアルタイム運行データが公開されたことで、数多くの便利な乗り換え案内アプリが開発されました。

市はコストをかけずに市民サービスを向上させ、民間企業は新たなビジネスチャンスを得るという、官民双方にメリットのあるエコシステムを構築しています。

参考:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/bbaea2a997300b76/reportsNY_201510.pdf

スマートシティ実現に向けた3つの主要な課題

スマートシティ実現に向けた3つの主要な課題

スマートシティの実現は、決して平坦な道のりではありません。

多くの都市が共通して直面する課題を理解し、事前に対策を講じることが重要です。

推進体制の構築とステークホルダーの合意形成

スマートシティは、行政だけで実現できるものではありません。地域の企業、大学、研究機関、そして最も重要な主役である市民といった、多様な関係者(ステークホルダー)との連携が不可欠です。

しかし、それぞれの立場や目的が異なるため、全体の方向性を一つにまとめ、協力体制を築くことは容易ではありません。

プロジェクトの初期段階で、関係者が一体となって議論し、街の将来像や目的を共有するプロセスが極めて重要になります。

データ連携基盤の整備と利活用

スマートシティの心臓部とも言えるのが、分野横断的な「データ連携基盤(都市OS)」です。しかし、この基盤を構築・運用するには高度な技術力と多額のコストが必要となります。

また、単にデータをつなげるだけでは意味がありません。収集したデータをどのように分析し、市民サービスや行政の意思決定に活かしていくのか、具体的な活用戦略を描くことが求められます。

プライバシー保護やセキュリティ対策に万全を期すことも、市民の信頼を得る上で欠かせない条件です。

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事業継続性の確保とマネタイズ

スマートシティのプロジェクトは、初期投資だけでなく、継続的な運用コストが発生します。補助金や交付金に頼ったモデルでは、財源が尽きた時点で事業が頓挫してしまうリスクがあります。

そのため、プロジェクトを長期的に継続させるためには、何らかの形で収益を生み出す仕組み(マネタイズ)を設計し、事業として自走できるモデルを構築することが重要な課題です。

官民連携によって、民間企業のビジネスとして成立するようなサービスを組み込む視点が求められます。

課題 

具体的な内容 

解決の方向性 

推進体制の構築 

関係者間の利害調整が難しい 

官民学民が参加する協議会などを設置し、目的を共有する 

データ連携 

基盤構築のコスト、セキュリティ、活用方法 

オープンソースの活用、

共同利用、活用事例の共有 

事業継続性 

初期投資・運用コストの確保 

民間サービスとの連携による

マネタイズモデルの構築 

スマートシティを成功に導くためのポイント

スマートシティを成功に導くためのポイント

数々の課題を乗り越え、スマートシティを成功させるためには、どのような点に留意すれば良いのでしょうか。

ここでは、国内外の事例から見えてきた3つの成功のポイントを解説します。

明確なビジョンと解決すべき課題の特定

最も重要なのは、「誰のために、何のためにスマートシティを実現するのか」というビジョンを明確にすることです。単に最新技術を導入することが目的になってはいけません。

自分たちの街が抱える最も重要な課題は何か(例えば、高齢者の移動支援、防災力の強化、観光振興など)を特定し、その課題解決にデジタル技術をどう活用するのか、という住民目線のストーリーを描くことが成功の第一歩となります。

住民の理解と参画を促す仕組みづくり

スマートシティの主役は、あくまでもそこに住む住民です。住民がその取り組みに価値を感じ、積極的に参加してこそ、真のスマートシティは実現します。

プロジェクトの計画段階から住民の意見を丁寧にヒアリングしたり、実証実験に参加してもらったりするなど、住民が「自分たちのまちづくり」として主体的に関われる仕組みを作ることが重要です。

デジタル技術を活用して、市民の声を迅速に収集し、プロジェクトに反映させることも有効な手段です。

スモールスタートと機動的な開発

最初から街全体の壮大なシステムを構築しようとすると、莫大な時間とコストがかかり、失敗のリスクも高まります。

成功している多くの都市は、特定の地域や分野に絞って小さな成功事例(ユースケース)を作る「スモールスタート」から始めています。

そこで得られた成果や課題を分析し、改善を繰り返しながら、徐々に対象エリアやサービスを拡大していく「アジャイル型」のアプローチが有効です。これにより、リスクを最小限に抑えながら、着実にプロジェクトを前進させることができます。

まとめ

本記事では、スマートシティの基本概念から国内外の先進事例、そして成功に向けた課題とポイントを解説しました。

スマートシティは、単なる技術導入プロジェクトではなく、住民一人ひとりの暮らしを豊かにするための、まちづくりの大きな変革です。

成功の鍵は、明確なビジョンのもと、官民学民が連携し、住民の声に耳を傾けながら、着実に歩みを進めることにあります。この記事が、未来のまちづくりを考える上での一助となれば幸いです。


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ゼンリンデータコム編集部
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