
MaaSの成功事例15選を紹介!仕組みやメリット、今後の展望も解説します
MaaS(マース)という言葉を耳にする機会が増えてきていませんか。
MaaSは、私たちの移動をより便利で快適にするだけでなく、交通渋滞や環境問題、地方の過疎化といった社会課題を解決する可能性を秘めています。
この記事では、MaaSの基本的な仕組みから、国内外の具体的な成功事例、そして今後の展望までを分かりやすく解説します。自社の新規事業や地域活性化のヒントを探している方は、ぜひ参考にしてください。
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目次[非表示]
- 1.MaaSとは?基本的な仕組みを解説
- 2.MaaSが解決する社会課題と導入メリット
- 2.1.交通渋滞の緩和と環境負荷の軽減
- 2.2.交通弱者の移動手段の確保
- 2.3.地域経済と観光業の活性化
- 3.【分野別】国内のMaaS導入事例6選
- 3.1.【都市交通】トヨタ自動車「my route」
- 3.2.【観光】伊豆急行「Izuko」
- 3.3.【観光】群馬県「群馬MaaS」
- 3.4.【医療・福祉】 universal MaaS
- 3.5.【物流】 物流MaaSによる輸配送の効率化
- 3.6.【不動産】不動産MaaSによる付加価値向上
- 4.世界の先進的なMaaS事例4選
- 4.1.【フィンランド】MaaS Global「Whim」
- 4.2.【ドイツ】ドイツ鉄道「DB Navigator」
- 4.3.【スイス】スイス連邦鉄道「SBB Mobile」
- 4.4.【アメリカ】Bird「Bird(バード)」
- 5.MaaS導入を成功させるための課題
- 5.1.複数の事業者間でのデータ連携
- 5.2.法律や制度の整備
- 5.3.マネタイズとビジネスモデルの確立
- 6.MaaSの今後の展望と未来
- 6.1.自動運転技術との融合
- 6.2.AIによる需要予測と最適化
- 6.3.スマートシティの中核としての役割
- 7.まとめ
MaaSとは?基本的な仕組みを解説
MaaS(Mobility as a Service)とは、直訳すると「サービスとしての移動」を意味します。
これは、電車、バス、タクシー、シェアサイクルといったさまざまな交通手段を、ICT(情報通信技術)を活用して統合し、まるで一つのサービスのように利用できる仕組みや概念のことです。
利用者はスマートフォンアプリなどを通じて、目的地までの最適なルート検索、予約、そして決済までをシームレスに行うことができます。
「サービスとしての移動」という概念
従来、私たちは電車に乗る際には鉄道会社のサービスを、バスに乗る際にはバス会社のサービスを、それぞれ個別に利用していました。
しかしMaaSの世界では、これらの交通手段がすべて統合的に提供されます。利用者は、複数のアプリを使い分ける手間から解放され、ドア・ツー・ドアでの最適な移動体験を享受できます。
この「所有から利用へ」という考え方は、私たちの移動に対する価値観を大きく変えるものです。
項目 | 従来 | MaaS |
交通手段の利用 | 個別の事業者ごとに 検索・予約・決済が必要 | 1つのプラットフォームで 一括して完結 |
移動の捉え方 | 手段の組み合わせ(乗り換え) | 目的達成のための単一の サービス |
支払い | 都度払い、個別の交通系IC カードなど | アプリでの一括決済、 サブスクリプションなど |
情報 | 各事業者のWebサイトや アプリで個別に確認 | リアルタイムの運行情報や 混雑状況を統合的に提供 |
MaaSの実現に必要な4つのレベル
MaaSは、そのサービスの統合レベルに応じて0から4までの5段階に分類されます。
このレベル分けは、MaaSの成熟度を測る指標となり、現在どの段階にあるのか、次に何を目指すべきなのかを示しています。
レベル0:統合なし
各交通サービスが個別に存在し、連携していない状態です。レベル1:情報の統合
複数の交通手段の情報を、一つのプラットフォーム上で検索・比較できる状態です。
乗り換え案内アプリなどがこれに該当します。レベル2:予約・決済の統合
情報の統合に加え、予約や決済までを一括で行える状態です。
多くのMaaSアプリがこのレベルを目指しています。レベル3:サービスの統合
交通サービスだけでなく、定額制(サブスクリプション)など、多様な料金体系が提供される状態です。利用者は、自分のライフスタイルに合わせて最適なプランを選択できます。レベル4:政策の統合
交通事業者だけでなく、行政や都市計画とも連携し、交通を街づくり(スマートシティなど)の一環として捉える段階です。
交通需要の調整やインフラ整備なども含めた、最も高度なMaaSの形です。
★関連記事
MaaSが解決する社会課題と導入メリット

MaaSの導入は、単に移動が便利になるだけでなく、社会が抱える様々な課題の解決に貢献します。
利用者、交通事業者、そして社会全体にメリットをもたらす可能性を秘めています。
交通渋滞の緩和と環境負荷の軽減
都市部では、自家用車の利用集中による交通渋滞が深刻な問題となっています。
MaaSが普及し、公共交通機関やシェアサービスの利用が促進されることで、道路を走る車の総量が減少し、渋滞の緩和が期待できます。
これにより、移動時間の短縮はもちろん、CO2排出量の削減にもつながり、環境負荷の軽減に貢献するでしょう。
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交通弱者の移動手段の確保
人口減少や高齢化が進む地方では、公共交通機関の路線廃止や減便が相次ぎ、車を運転できない高齢者や学生などの「交通弱者」が移動手段を失いつつあります。
MaaSは、デマンド型交通(予約制の乗り合いバスなど)やライドシェアといった新しいサービスと既存の交通機関を組み合わせることで、こうした交通弱者の移動の自由を確保し、生活の質を維持・向上させる役割を担います。
地域経済と観光業の活性化
観光地までのアクセスが不便なことは、観光客を呼び込む上での大きな障壁となります。
MaaSによって、空港や主要な駅から観光地や宿泊施設までの二次交通・三次交通がシームレスにつながれば、観光客の周遊性が高まるでしょう。
アプリの多言語対応などを進めることで、インバウンド観光客の誘致にもつながり、地域全体の経済活性化に大きく貢献することが期待されています。
【分野別】国内のMaaS導入事例6選

日本国内でも、国土交通省や経済産業省の後押しを受け、様々な地域や企業でMaaSの実証実験や社会実装が進んでいます。
ここでは、注目の国内事例を分野別に紹介します。
【都市交通】トヨタ自動車「my route」
トヨタ自動車が開発・提供するMaaSアプリ「my route(マイルート)」は、国内MaaSの代表的な事例の一つです。
このアプリでは、公共交通機関、タクシー、シェアサイクルなど多様な交通手段を組み合わせたルート検索に加え、一部地域では予約から決済までを一貫して行うことができます。
様々な交通事業者と連携し、横浜、富山、九州など全国各地で展開を進めています。
【観光】伊豆急行「Izuko」
静岡県の伊豆エリアで実証実験が行われた「Izuko」は、観光型MaaSの先進事例です。
電車やバスのフリーパスに、観光施設の入場券などを組み合わせたデジタルチケットをアプリ上で購入できる仕組みが導入され、観光客はスマートフォン一つで伊豆エリアを周遊でき、地域の観光消費額向上にも貢献しました。
実証実験は2021年3月に終了しており、社会実装に向けた検討が行われていました。
参考:https://camel3.com/cms/files/izukyu/MASTER/0300/yuAyYVno.pdf
【観光】群馬県「群馬MaaS」
群馬県では、JR東日本などと連携し、県全域を対象とした「群馬MaaS」を展開しています。
このサービスは、観光客だけでなく地域住民の生活交通の利便性向上も目的としています。デジタルフリーパスの販売や、AIを活用した観光施設の推薦など、利用者のニーズに合わせた多様な機能を提供しています。
【医療・福祉】 universal MaaS
MaaSは、医療や福祉の分野でも活用が期待されています。
「universal MaaS」は、高齢者や障がいを持つ方など、移動に困難を抱える人々の通院や外出を支援する取り組みです。
複数の交通事業者が連携し、車いす対応車両の手配や、介助サービス付きの移動プランを提供することで、誰もが移動をあきらめない社会を目指しています。
参考:https://www.universal-maas.org/
【物流】 物流MaaSによる輸配送の効率化
物流業界では、EC市場の拡大に伴う荷量の増加や、ドライバー不足が深刻な課題です。
「物流MaaS」は、交通データや車両データを活用して、最適な配送ルートを導き出し、輸配送の効率化を図る取り組みです。
これにより、トラックの積載率向上や、ドライバーの労働時間短縮といった効果が期待されています。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/20230119_jimukyokushiryou.pdf
【不動産】不動産MaaSによる付加価値向上
不動産業界においても、MaaSとの連携が始まっています。
例えば、マンションの居住者専用のカーシェアリングや電動キックボードを提供したり、最寄り駅までのオンデマンド交通サービスを導入したりすることで、物件の付加価値を高める動きが見られます。
移動の利便性は、住まい選びの重要な要素であり、不動産とMaaSの連携は今後さらに加速すると考えられます。
世界の先進的なMaaS事例4選
海外では、日本よりも早くからMaaSの導入が進んでおり、特にヨーロッパで先進的な事例が数多く生まれています。
ここでは、代表的な海外のMaaS事例を紹介します。
【フィンランド】MaaS Global「Whim」
世界で初めてMaaSという概念を実用化したとされるのが、フィンランドのMaaS Global社が提供する「Whim(ウィム)」です。
Whimの最大の特徴は、公共交通機関やタクシー、レンタカーなどが乗り放題になる月額定額制(サブスクリプション)プランを導入している点です。
利用者は自家用車を所有しなくても、Whimがあればあらゆる移動ニーズを満たすことができ、MaaSレベル3を実現したサービスとして世界中から注目されています。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000277496.pdf
【ドイツ】ドイツ鉄道「DB Navigator」
ドイツ鉄道(DB)が提供する「DB Navigator」は、公共交通が主体となったMaaSの成功事例です。
鉄道だけでなく、バスや路面電車など、国内のほぼすべての公共交通機関の検索・予約・決済がこのアプリ一つで完結します。
早期からデジタル化を推進し、圧倒的な利用者数を誇るこのアプリは、MaaSが大規模に普及したモデルケースと言えるでしょう。
参考:https://int.bahn.de/en/booking-information/db-navigator
【スイス】スイス連邦鉄道「SBB Mobile」
スイス連邦鉄道(SBB)の公式アプリ「SBB Mobile」も、非常に評価の高いMaaSアプリです。
正確な運行情報と使いやすいインターフェースが特徴で、国内のあらゆる公共交通機関をシームレスに利用できます。
チケット購入も簡単で、国民的なインフラとして深く浸透しており、公共交通を中心とした街づくりを進めるスイスの象徴的な存在です。
参考:https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r04/hakusho/r05/html/n1122c01.html
【アメリカ】Bird「Bird(バード)」
アメリカ発の「Bird」は、電動キックボードのシェアリングサービスからスタートし、MaaSプラットフォームへと進化を遂げたユニークな事例です。
Google MapsやMoovitなどの主要MaaSプラットフォームとの統合により、利用者は公共交通機関や他のシェアモビリティサービスと組み合わせて電動キックボードを利用できるようになり、ラストワンマイルの移動手段を統合した便利な都市交通ネットワークを構築しています。
参考:https://www.bird.co/blog/bird-google-maps-integration-increase-sustainable-mobility-access/
MaaS導入を成功させるための課題

MaaSの普及には、多くのメリットが期待される一方で、解決すべき課題も存在します。
これらの課題を乗り越えることが、MaaSを社会に根付かせるための鍵となります。
課題 | 具体的な内容 | 解決の方向性 |
データ連携 | 交通事業者ごとに異なるシステムやデータ形式の壁。 リアルタイムデータの共有が難しい。 | 標準化されたデータ連携基盤の構築。 オープンデータの推進。 |
法律・制度 | 既存の法律(道路運送法など)が新しいサービス形態に対応していない場合がある。 | 新しいモビリティサービスを想定した規制緩和や法整備。 |
マネタイズ | 利用者から得る手数料だけでは、プラットフォームの運営コストを賄うのが難しい場合がある。 | 広告モデル、自治体からの補助金、データ活用による収益化など、多様なビジネスモデルの検討。 |
複数の事業者間でのデータ連携
MaaSを実現するためには、鉄道、バス、タクシーなど、様々な交通事業者が保有する運行データや予約・決済システムを連携させる必要があります。
しかし、各事業者が独自にシステムを構築してきた経緯があり、データ形式の統一やリアルタイムでの情報共有には高いハードルが存在します。
事業者間の協力関係を築き、オープンなデータ連携基盤を構築することが不可欠です。
法律や制度の整備
オンデマンド交通やライドシェアといった新しいモビリティサービスは、既存の道路運送法などの枠組みでは想定されておらず、事業展開の障壁となるケースがあります。
また、複数のサービスを組み合わせた際の運賃設定や責任の所在など、法的に整理すべき点も少なくありません。安全性を確保しつつ、イノベーションを促進するための柔軟な法整備が求められます。
マネタイズとビジネスモデルの確立
MaaSプラットフォームの運営には、システムの開発・維持費用がかかります。
しかし、利用者からの手数料収入だけで安定した収益を確保するのは容易ではありません。
プラットフォーム上で地域の店舗情報や広告を配信したり、自治体と連携して公共交通の維持に貢献したり、収集した移動データを分析して都市計画に活用するなど、多様なマネタイズ手法を組み合わせた持続可能なビジネスモデルを確立することが重要です。
MaaSの今後の展望と未来

MaaSは、他の先進技術と融合することで、さらに進化していくと予想されます。
私たちの暮らしや社会を、より豊かで持続可能なものに変えていくでしょう。
自動運転技術との融合
将来的には、ドライバー不要の自動運転車がMaaSのネットワークに組み込まれることが期待されています。利用者がアプリで配車を依頼すると、自動運転の車両が迎えに来て目的地まで送ってくれる。
このようなサービスが実現すれば、ドライバー不足の解消や人件費の削減につながり、24時間365日、安価で利用できる交通サービスが生まれる可能性があります。
AIによる需要予測と最適化
AI(人工知能)技術の活用は、MaaSをさらに高度化させます。
過去の移動データや天候、イベント情報などをAIが分析することで、将来の交通需要を高い精度で予測可能です。
これにより、需要に応じて運行本数や車両の配置をリアルタイムで最適化し、利用者の待ち時間を減らしつつ、事業者にとっては無駄のない効率的な運行が実現します。
スマートシティの中核としての役割
MaaSは、単なる交通システムに留まらず、スマートシティを実現するための中核的な役割を担います。
エネルギー、通信、医療、行政サービスといった都市の様々な機能とMaaSが連携することで、人々はより快適で質の高い生活を送ることができるようになります。
例えば、MaaSアプリで病院を予約すると、自動的に最適な交通手段が手配されるといった、データ連携による新しいサービスが生まれていくでしょう。
まとめ
本記事では、MaaSの基本的な概念から国内外の具体的な事例、そして今後の展望までを網羅的に解説しました。
MaaSは、移動の利便性を向上させるだけでなく、交通渋滞、環境問題、地域社会の課題解決に貢献する大きな可能性を秘めています。
この記事で紹介した事例や考え方が、皆様のビジネスや活動のヒントとなれば幸いです。
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