Go To トラベル キャンペーン動向調査【第2弾】
-位置情報ビッグデータを使い効果を分析-

2020年7月22日より開始されたGoToトラベルキャンペーン。その効果について、いくつかのホテルや旅館の利用実態や、予約サイトの利用状況等を情報源として分析するニュースや記事を目にする機会も多くなっていますが、位置情報ビッグデータを活用することでも、全国を俯瞰して人々がどの程度旅行しているのかを分析することが可能です。
前回は、コロナ前の2019年と比較しつつ、2020年4月から8月までに行われた宿泊旅行の数を、GPS位置情報ビッグデータ「混雑統計®」を活用して調査しました。今回は、そこに9月のデータを加え、新たに日帰り旅行や9月4連休に着目した分析を行いました。GoToトラベルキャンペーンで、全国の都道府県へは、どの程度の観光客が戻ってきたのでしょうか。ぜひご一読いただけますと幸いです。
※当分析では、混雑統計®データから2019年および2020年の、4月から9月におけるデータを使用しております。
※GPSの測位誤差などによって実際の傾向と異なる可能性があります。

データ集計の方法について

旅行の定義として、都道府県毎に、他県在住者が宿泊に訪れた旅行を「来県宿泊旅行」、他県在住者が日帰りで訪れた旅行を「来県日帰り旅行」と定義し、それぞれの数を集計しました。
なお、位置情報ビッグデータから判断する旅行の定義ですが、
「宿泊旅行」については、午前4時前後に、居住している都道府県外の任意の場所で移動せずに滞在していた場合、と定義しました。
また、
「日帰り旅行」については、観光庁「旅行・観光消費動向調査」では目安として、片道の移動距離が80km以上または所要時間が8時間以上、と定義されていることを参考にして、外出から帰宅までの間に、総移動距離が160km以上、または、所要時間が8時間以上(勤務地へ滞在していた時間は除外)となっている場合、と定めました。
ある県の来県宿泊旅行数を集計する場合、下図の1、2、3のように、県内の任意の1箇所もしくは複数箇所で滞在(宿泊含む)したり、前後で他県で滞在(宿泊含む)を行った場合であっても、数えるのは旅行の数であることから、全て1とカウントされます。
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来県宿泊旅行数、来県日帰り旅行数の集計イメージ(上図の1,2,3)の行動は全て、1とカウント)
なお、本レポートのグラフで示している来県宿泊旅行数および来県日帰り旅行数は全て、「混雑統計®」が保持する600万人分(2020年9月時点)の位置情報サンプル数を、日本の人口に拡大推計した数となります。

月別の傾向

それではまず、4月から9月までの各月における、東京都を除く46道府県の来県宿泊旅行数の推移を見てみます。
東京都は、GoToトラベルキャンペーンの対象から除外されているため、集計対象から除外しています。
前回は月毎の合計値を比較しましたが、月により日数が異なることを考慮し、今回は
1日あたりの平均値の変動を表示しています。まずは、休日の値を見ていきましょう。
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46道府県の休日における1日あたりの来県宿泊旅行数(2019年・2020年比較)
青の折れ線は2019年、オレンジの折れ線は2020年の、各月における1日あたりの来県宿泊旅行数を表しています。棒グラフは、2019年を100%としたとき、2020年の旅行数がどの程度回復したかを表しています。
2019年はお盆や夏期休暇の影響が大きかった8月をピークとして、9月の来県宿泊旅行数は7月並に減少していました。
一方で、
2020年は9月の来県宿泊旅行数が8月よりも大幅に上昇しています。2020年は7月から8月にかけては例年のような伸びがなく微減したものの、9月は新型コロナ感染拡大以降、最大の旅行数となりました。前年同月比でも70%まで値が回復しており、9月に入りいよいよ本格的にGoToトラベルキャンペーンの効果が現れ始めたように思われます。
次に、比較のため平日の値も見ていきます。
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46道府県の平日における1日あたりの来県宿泊旅行数(2019年・2020年比較)
2019年は休日同様、8月が来県宿泊旅行数のピークとなっています。2020年は、6月以降継続して2019年の6割前後の旅行数となっています。平日は出張もカウントされ易いことを考慮すると、遠方への出張の一定割合がオンライン会議に置き換わり、それが定着したと言えるのかもしれません。

2020年9月の4連休における旅行数の
都道府県別比較

ここからは、観光地の混雑や高速道路の渋滞が広くメディアを賑わせていた、2020年9月4連休前後の旅行数について着目し、分析しました。
最初に、
2019年と2020年における、9月連休前後の旅行者数を日別に比べたデータを御覧ください。
2019年は14,15,16日と21,22,23日の2回に分けて3連休があり、2020年は19,20,21,22日の4連休が1回ありました。そこで、
各年9月における14日から27日までの来県宿泊旅行数を日別に比較してみました。
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9月の連休前後における日別の来県宿泊旅行数(2019年・2020年比較)
こうしてみると、2020年は2019年9月と比べ、毎日およそ10,000前後少なく推移しています。
また、2020年9月の4連休は賑わいが報道されていたとはいえ、2019年9月の2回の3連休よりもやや少ない宿泊旅行数となっています。来県宿泊旅行の出発日の推移を見ると、
連休初日が最も数が多くなり、2019年は連休中日に比べて2倍近くになっています。
一方で、2020年は4連休も影響してか連休2日目から旅行に出発する人も一定数見受けられました。
また、来県宿泊の場合、金曜から旅行に出発する人数も多いのが特徴的です。
次に、
9月4連休における来県宿泊旅行数を都道府県別に見てみましょう。
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2020年9月の4連休における、各都道府県の来県宿泊旅行数
やはり目が行くのは東京都への宿泊旅行数が圧倒的に多いことです。東京都がGoToトラベルの対象となるのは2020年10月以降ですが、多くの人が東京都へ宿泊旅行に訪れていたことが分かります。
また、他の都道府県を見ると、東京に近い関東地方にある神奈川、千葉、静岡、埼玉、長野や、近畿地方の大阪、兵庫へも、多くの人が宿泊旅行に訪れています。
他方で、北海道、東北、中国、四国、九州・沖縄地方を目的地とする旅行数は、少ない結果となりました。
宿泊旅行は東京、大阪周辺で活発になっているものの、地方では比較的緩やかであることが分かります。
次に、
9月4連休における来県日帰り旅行数を見てみましょう。
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2020年9月の4連休における、各都道府県の来県日帰り旅行数
日帰り旅行について都道府県間を比較すると、より東京が一極集中して突出した結果となりました。これは、東京が周囲の都道府県と比較して宿泊を伴わない日帰り観光客の割合が高いエリアであることを示していると思われます。また今回は、仕事で他県から東京へ日帰りで訪れた人であっても、勤務地立ち寄り以外の時間で旅程が8時間を超えた場合はカウントされる集計仕様であったため、勤務者も含まれている可能性があります。
また、
沖縄や北海道など、都心から遠のく程、日帰りの旅行客は少なくなっていることが分かります。なお、全体傾向として、日帰り旅行は宿泊旅行のおよそ5倍の数となっています。

混雑統計®では、他にも様々な集計が可能です

いかがでしたでしょうか。今回は前回に続き、携帯GPSの位置情報ビッグデータ・混雑統計®を活用し、「Go To トラベル事業」の開始前後で、全国の旅行者数にどのような変化が見られたのかを分析してみました。混雑統計®は全国民のおよそ22人に1人の行動を集計した標本調査ではありますが、こうして位置情報ビッグデータで全国の旅行行動を俯瞰して見てみることで、GoToトラベルキャンペーンの効果が各地にどのように現れていのかが定量的に分かり、新たな発見もあったかと思います。

今回のような観点での調査の他にも例えば、「(月別・日別ではなく)時間別に結果を見たい」、「(都道府県ごとではなく)市区町村、メッシュ単位で集計したい」、「居住地、性年代などの属性別に分析したい」、「旅行時の移動手段別に集計したい」など、様々な観点に応じてデータを集計することが可能です。(一部承れない集計仕様もございます)
家を出て帰宅するまでの人々の行動をつかみ、分析することが可能です。
人の行動 イメージ
また、他にも、「このような集計はできるのか」、「この場合の御見積価格はいくらか」、「お打ち合わせで直接、混雑統計®について説明してほしい」といったご要望も承っておりますので、お気軽に「お問い合わせ」リンクよりご連絡をいただけますと幸いです。

各都道府県における月別の傾向

今回も最後に、休日の全国47都道府県における来県宿泊旅行数のグラフを掲載します。前回の調査レポートに9月のデータが追加されています。
また、前回は月間の合計来県宿泊旅行数を集計しましたが、今回は月によって日数が異なる影響を排除するため、各月とも、1日あたりの平均来県宿泊旅行数を集計しています。最も新しい、
2019年9月、2020年9月における変化に着目すると、来県宿泊旅行数が最も減少したのは沖縄県で57%減、最も回復したのは和歌山県で11%減、という結果でした。
皆さまも是非、気になった都道府県をクリックして集計結果をチェックしてみてください。
最後までご覧いただき、有難うございました。

北海道・東北地方

左から「北海道」「青森県」「岩手県」「宮城県」「秋田県」「山形県」「福島県」の順
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関東地方

左から「茨城県」「栃木県」「群馬県」「埼玉県」「千葉県」「東京都」「神奈川県」の順
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中部地方

左から「新潟県」「富山県」「石川県」「福井県」「山梨県」「長野県」「岐阜県」「静岡県」「愛知県」の順画像をクリックすると拡大表示。

近畿地方

左から「三重県」「滋賀県」「京都府」「大阪府」「兵庫県」「奈良県」「和歌山県」の順
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中国地方

左から「鳥取県」「島根県」「岡山県」「広島県」「山口県」の順
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四国地方

左から「徳島県」「香川県」「愛媛県」「高知県」の順。画像をクリックすると拡大表示。

九州地方

左から「福岡県」「佐賀県」「長崎県」「熊本県」「大分県」「宮崎県」「鹿児島県」「沖縄県」の順
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元となる位置情報データ 混雑統計®について

「混雑統計®」データは、NTTドコモが提供するアプリケーション※の利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータです。
位置情報は最短5分毎に測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれません。
※ドコモ地図ナビサービス(地図アプリ・ご当地ガイド)等の一部のアプリ

転載・引用について

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本ページの内容や図を利用する際には、「株式会社ゼンリンデータコム」の記載をお願いします。
また、各図のクレジット(「混雑統計®」©ZENRIN DataCom CO., LTD.)は削除・改変せずそのまま掲載をお願いします。

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