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交通分析に活用できるプローブデータとは? 取得できるデータや活用例を紹介

近年の車には速度計やカーナビなど、各種センサーや計測装置が搭載されています。

プローブデータとは、走行中の各車両からネットワークを通じて、位置や速度などのさまざまな情報を収集できるシステムのことを指します。

多くのデータを収集することで、渋滞予測などの交通分析が可能となるのです。

そこで本記事では、プローブデータの活用方法や使用するに当たっての課題点などについて詳しく解説します。

プローブデータを活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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目次[非表示]

  1. 1.プローブデータとは?
    1. 1.1.プローブデータの種類と取得データの違い
  2. 2.プローブデータの収集方法
    1. 2.1.カーナビから収集する
    2. 2.2.ドライブレコーダーから収集する
    3. 2.3.衝突防⽌警報補助装置から収集する
  3. 3.プローブデータとして収集するデータ例
    1. 3.1.走行履歴に関わるデータ
    2. 3.2.駐車場の入口情報 
    3. 3.3.目的地などの地点データ
    4. 3.4.燃費情報
    5. 3.5.警報履歴
  4. 4.プローブデータを活用するための課題
    1. 4.1.データ活用するためには、多くのデータ収集が必要となる
    2. 4.2.個人情報保護問題
    3. 4.3.交通量が少ないと集められるデータも少ない
    4. 4.4.データの精度と鮮度問題
    5. 4.5.課題解決に向けての動き
  5. 5.プローブデータとはどのような状況で活用できる?
    1. 5.1.渋滞予測などの交通情報の把握
    2. 5.2.災害時でも通行可能な道路情報取得
    3. 5.3.ヒヤリハット多発地点の分析
  6. 6.まとめ:プローブデータを有効活用し、交通分析に活かそう
  7. 7.プローブデータを活用し交通分析業務を行いたいなら、ゼンリンデータコムにご相談を


プローブデータとは?

プローブデータとは?

プローブデータとは、ブレーキ・速度計・カーナビ・ドライブデータなどの、移動体通信システムを用いて取得されるデータのことです。

走行中の車から通信ネットワークなどを通じて位置や速度などのさまざまな情報を取得できます。

大量のプローブデータを取得することで、渋滞多発地帯の把握・解消や交通安全対策などのさまざまな取り組みに活用できるのです。

プローブデータは、下記のような場面で活用できます。

  • 車の速度や位置などの情報を取得し、渋滞予測などの交通情報を取得する
  • 災害時の通行可能な道路情報を取得する
  • 潜在的な事故危険箇所を解明し、交通安全対策へ活用する

実際に走行している車から情報を入手することで、主要道路だけでなく、広範囲な道路交通情報の取得が可能になります。


プローブデータの種類と取得データの違い

プローブデータの1つに、国土交通省が運営主体となる「ETC2.0」というものが挙げられます。

ETC2.0とは常に変化する道路情報を必要なタイミングで受信し、運転者に渋滞情報や事故情報を提供するなど、安全な運転支援等を受けられるサービスです。

ただし、プローブデータを取得する仕組みとして、車載器と道路に設置されている路側機が通信する必要があるため、どの道路でもデータを取得できるわけではありません。

路側機は全国の高速道路に約1,700箇所、国道に約1,900箇所設置されています。 

ETC2.0は車載している車が多いため、データ量は豊富ですが、路側機がない道路のデータを取得することができないというのがデメリットとなります。

一方で民間のカーメーカーなどでは、カーナビやブレーキからプローブデータを取得することで路側機のない道路の交通情報を取得できるため、得られるデータの幅が広がります。

  • 新しい道路が開通した後、渋滞が緩和されたか、車の流れがどう変わったか検証できる
  • イベントの開催などで普段渋滞しない道が混んでいた時の情報を収集できる
  • 燃費向上やCO2の削減につながる

上記の通り、プローブデータは種類によってデータに特徴が出るため、活用用途に応じて使い分けることが必要です。


プローブデータの収集方法

プローブデータの収集方法

先の項目で紹介したETC2.0のほか、プローブデータの収集方法は様々です。

これらのプローブデータの収集方法について、下記で詳しく解説いたします。


カーナビから収集する

プローブデータは、カーナビからデータを収集することが可能です。

走行道路や走行時間、速度などを収集することで、より高精度な道路交通情報をドライバーに提供できるようになります。

プローブデータとして収集する情報は下記の通りです。

  • 車両に関する情報
  • 走行位置の履歴
  • 急な車両の動きの履歴
  • カーナビに関する情報

高精度な道路交通情報をドライバーに提供するだけでなく、急な車両の動きなども統計的に処理することで、道路上の障害物の検知や走行に注意が必要な場所を把握し、より具体的な情報を提供できます。

また、カーナビから収集される情報に車両番号などの個人を特定する情報は含まれないため、セキュリティ面でも安心です。


ドライブレコーダーから収集する

プローブデータを簡単に取得する方法として、ドライブレコーダーへの導入も進んでいます。

タクシー業者や物流業界では、自社の車両の運行管理・安全管理・労務管理などにおいて、各車両のプローブデータを収集する業者が増加傾向にあります。

ドライブレコーダーで収集できるデータの一例は下記の通りです。

日時

日付・時間

位置

緯度・経度

走行状態

速度・前後加速度・横加速度・角速度・ビデオカメラの映像・走行時間 など


ドライブレコーダー出荷台数は年々増加しており、2021年ではドライブレコーダー国内出荷台数が前年同期比7.6%増の126万8986台だったと発表されています。

(引用元:ドライブレコーダー出荷台数|レスポンス)

近年ではさまざまな機種が販売されており、収集できるデータもより高精度になっています。


衝突防⽌警報補助装置から収集する

プローブデータは、衝突防止警報補助装置から収集することも可能です。

衝突防止警報補助装置から収集できる情報は下記の通りです。

  • 歩行者との衝突警報の発生位置
  • 月別総走行時間
  • 種類別の警報発生率

従来のプローブデータでは、速度や急減速地点などの自社情報しか扱うことができませんでしたが、衝突防止警報補助装置から収集することで、より関連性の高い警報情報を利用した適切な交通安全性の評価が可能になりました。


プローブデータとして収集するデータ例

プローブデータとして収集するデータ例

プローブデータとして収集するデータの例は下記の通りです。

これらのデータ例について下記で詳しく解説いたします。


走行履歴に関わるデータ

プローブデータとして収集するデータの一例に、下記のような挙動履歴に関わるデータがあります。

  • 走行時刻
  • 走行経路
  • 前後加速度(車両の前後方向における速度の変化)
  • 左右加速度(車両の左右方向における速度の変化)

上記のプローブデータは、車両ごとに連続して取得することができ、多くの車両から取得するシステムを構築することで道路交通情報を随時モニターすることが可能です。


駐車場の入口情報 

目的地に到着した際に、駐車場の入り口情報を記録する「オートパーキングメモリーデータ」というものがあります。

オートパーキングメモリーデータを多くの車両から収集し分析することで、集合地を地図データとして活用することが可能です。

たとえば、ひとつの店舗で複数の駐車場を持つ場合でも、ひとつの施設につき最大8箇所までの駐車場の入り口データを保存できます。

カーナビなどの情報では、目的地との位置関係や過去の駐車履歴などを参考に最適な駐車場を自動で割り出します。

しかしプローブデータは、過去の利用者が実際に利用した入り口を確認し、整備したポイントを示せるのです。


目的地などの地点データ

プローブデータは、目的地に設定した地点データや出発地点データを収集できます。

従来では施設周辺に駐車場がない場合、どこに駐車したのか把握することは困難でした。

しかしプローブデータを活用することによって、正確な滞在時間だけでなく​​、ユーザーが目的地を検索、設定することで実際にそこに訪れたかどうかを分析できます。

それにより、観光地などの人気シーズンの情報も収集できるのです。

プローブデータはプライバシーの観点から、利用者の自宅情報と結びつけていません。

これでは利用者の行動把握をすることができないため、カーナビの停車時間と位置情報から利用者の居住エリア推定アルゴリズムを作成することで、観光分析や商圏分析が可能となりました。


燃費情報

プローブデータを活用することで、利用者の走行履歴によって、発車の際に燃費のよい走り出しができるようサポートできます。

燃費のよいスタートをしたかどうかや、普段の走行時における燃費状況を解析エンジンで処理し、レポートすることが可能です。


警報履歴

商用車のプローブデータでは、下記の潜在的な危険性がわかる情報を分析できます。

  • 急減速
  • 車線逸脱
  • ふらつき
  • 車間距離警報
  • 路面標示警報 など
車線逸脱警報・ふらつき警報

・ウインカーを出さずに車線を跨ぐ

・車線逸脱が1分以内に3回検知される

車間距離警報

・走行速度に応じた前方車両との距離を確保していない

路面標示警報

・自車の走行速度路面標示の速度異常になっている


デジタル式運行記録計(デジタコ)の個車属性・位置情報・走行状態とドラレコの交通事故危険指標が一体となっているため、位置情報や速度の情報だけでなく、警報作動履歴なども提供できます。


プローブデータを活用するための課題

プローブデータを活用するための課題

プローブデータを活用することで、さまざまなデータを取得できますが、抱えている課題もあります。

ここからは、プローブデータが抱える課題について解説します。


データ活用するためには、多くのデータ収集が必要となる

プローブデータを用いて交通状況の予測をするためには、多くのデータ収集が必要となります。

平常時の予測は実証実験や実用化がされていますが、工事や事故発生時の遅延予測は一般道においてほとんど実証されていません。

これらの情報を予測するためには、工事や事故、イベント情報、閉塞状況などの実績情報と交通状況が分析できる多くのデータが必要です。

また市内の幹線道路をリアルタイムでモニタリングするためには、タクシーや物流業界などの商用車だけでなく、一般車両など相当数の車両が必要になります。


個人情報保護問題

プローブデータを活用した正確な交通情報の提示はほとんどのドライバーが歓迎する一方、躊躇するドライバーも多い傾向にあります。

プローブデータの個人情報問題には下記の特徴があります。

  • 各車両から発信するプローブ情報には、必ず位置と時間が含まれている
  • 常にどこにいるか把握される可能性がある
  • 走っている速度を収集され、速度違反でペナルティを課せられるのではないかという不安がある
  • プローブデータ収集を業者に許可することで、ドライバーが関与することなく自動的にデータが収集されてしまう

上記のようにどの情報がいつ収集され、どのように利用されるか明らかでないことから、個人情報に対する懸念があるといえるでしょう。


交通量が少ないと集められるデータも少ない

プローブデータは、過去にユーザーが通行した道路に交通情報のデータが構築されます。

高速道路や主道路などの交通量の多い場所では、多くの情報を収集できます。

しかし裏道や地方の道路では元々の交通量が少ないため、収集できるデータも限られてしまうのです。


データの精度と鮮度問題

プローブデータのさらなるサービス拡大には、データの精度と鮮度問題における改善が必要です。

精度と鮮度に関する課題の例は下記の通りです。


精度

電源入切時前後のデータを消去→道路の起点と終点情報の欠如→観光地へのアクセスの分析が困難

鮮度

路側機下を通過時にデータを収集→リアルタイムでの情報収集が困難→渋滞予測などの精度低下

※蓄積データをまとめて送信するため、リアルタイムデータは路側機周辺のみに限られる。


課題解決に向けての動き

プローブデータは上記で説明した通り、様々な課題を抱えていますが、解決に向けて検討が進んでいるものもあります。

例えば個人情報保護の問題については、2022年4月に改正個人情報保護法が施行されました。

「AI・ビッグデータ時代への対応」を念頭においた改正であり、個人による自身の個人情報の利用停止・消去等の請求権が拡大されています。

個人の権利や利益を保護しつつも、個人情報の有用性とのバランスを図り、データ活用を進めていくことが今後より重要になってくることでしょう。

利用目的の制限やデータを提供したくない場合のオプトアウト方法の提示など、引き続き検討が進むことで、安心してデータを活用できるようになることを期待しています。


プローブデータとはどのような状況で活用できる?

プローブデータとはどのような状況で活用できる?

プローブデータは、下記のような状況で活用できます。

ここでは、プローブデータがどのような状況で活用できるのか解説いたします。


渋滞予測などの交通情報の把握

プローブデータは、速度低下などの情報から渋滞予測や道路情報を把握するために活用されます。

従来の渋滞予測技術では、交通量や速度情報によって算出されたインターチェンジ間の所要時間を用いて渋滞を把握していました。  

しかしプローブデータを活用することで、蓄積された車両の走行履歴や挙動履歴を元に、道路上に設置されたアンテナを通過することで、基本情報と共にリンクアップされるのです。  

プローブデータには時刻や位置などの情報が含まれています。  

たとえば縦軸に時刻、横軸に起点を距離とし、記録時の速度を色に対応することで、各車両のデータを可視化できます。


災害時でも通行可能な道路情報取得

プローブデータを活用することで、災害時でも通行可能な道路情報を取得することが可能です。

大規模な災害時には、道路の損壊などによって多くの箇所で通行不能となる事態が予測されます。

物資の供給や避難や救助などのために、通行可能なルートの確保は重要です。

このような問題に対して、近年では東日本大震災や熊本地震の際に「民間プローブ情報」が活用されました。

民間プローブ情報は、国内のカーメーカーなどが独自に収集を行う情報であり、車両の同行実績が把握できます。

この情報がWeb上に公開され、災害時の有力な情報として活用されたのです。


ヒヤリハット多発地点の分析

ヒヤリハットとは、幸い事故に至らなかった事象のことです。

プローブデータは「0.5G以上の負の前後加速度を伴う減速」をヒヤリハットとして定義し、これを上回る減速が見られた場合、危険回避挙動と判断します。

ヒヤリハットの発生が予測されるシーンは下記の通りです。

  • 交差点右左折時の歩行者・自転車に対する危険回避の急ブレーキ
  • 右折時の対向車に対する危険回避時の急ブレーキ
  • 沿道道路の出入り車両に対する危険回避の際の急ブレーキ

プローブデータは、上記のようなシチュエーションを収集・分析し、ヒヤリハット発生回数や確率などについて細かく分析できます。


まとめ:プローブデータを有効活用し、交通分析に活かそう


プローブデータを活用することで、従来の技術では困難だった適切な交通分析を行うことが可能です。

車両一台一台の挙動を把握することで、各種施策や路線整備などにより的確に捉えられるでしょう。

プローブデータを活用したさまざまなサービスが広がりを見せる一方、個人情報に関する問題やデータの精度や鮮度に関する課題なども挙げられます。

プローブデータを活用し、より効率的な交通安全対策や渋滞対策の実現に向けた取り組みが進められています。




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ゼンリンデータコム編集部
ゼンリンデータコム編集部
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