ー交通分析ソリューション活用事例1ー

【約420万台のHondaフローティングカーデータを可視化!】
プローブデータを活用した交通分析をより身近なものに

会社名 株式会社 福山コンサルタント
活用分野 交通分析
活用期間

約1年

※初期のHondaインターナビからカープローブデータは10年以上活用

導入規模 約10名

道路・交通分野に強みを持つ建設コンサルタント会社である「株式会社 福山コンサルタント」は、行政機関や民間企業の技術パートナーとして道路・交通をはじめとする社会資本整備の計画・評価・対策検討等を主な事業内容としています。

道路・交通分野の分析業務に活用いただいている「交通分析ソリューション」について、福山コンサルタントの中谷様、末成様に導入の背景や使用感などについて伺いました。

導入前の課題

プローブデータを購入する際、最初に集計要件を確定する必要があるため依頼までに時間がかかる上、納品データが想定した通りの結果ではない場合もある

・大容量データを分析できる技術メンバーが限られており、一部の人員に業務負荷がかかっている

選定理由 ・上記課題を解決するため、交通分野の専門家及びユーザー視点で「交通分析ソリューション」の開発に参画し、現在ツールを利用
導入の期待

・集計結果が地図上で可視化され、誰が見ても概要が分かる

・「どこを出発してどこに到着したのか」「どのルートを通ったのか」という車の流れを分析できるOD(Origin-Destination)・経路データが確認可能

・集計した分析結果をエクスポート(画像、CSVファイル)でき、効率的にレポートを作成可能

・交通分析データを可視化するまでの工数を半分以下まで削減でき、業務効率化を実現

導入前の課題 プローブデータの入手や分析にかかる工数を削減したい

―御社の事業内容と、お二人が取り組まれている業務内容について教えてください。

中谷氏:福山コンサルタント入社後、道路・交通・都市計画分野の技術者として移動データなどを活用したコンサルティングを中心に経験を積んできました。

2018年7月から約3年間は、福山コンサルタントのグループ会社で新技術・新事業を創出するSVI研究所に出向し、人流や車両のビッグデータ関連の新規事業開発に従事し、その一環として「交通分析ソリューション」の開発にも参画しました。

2022年4月からは福山コンサルタントへ戻り、データ活用を含む行政の包括的支援に取り組む中で、「交通分析ソリューション」を活用した業務の拡大も進めています。
福山コンサルタント
株式会社 福山コンサルタント 新領域推進室 新領域推進グループ
課長 中谷俊文氏
福山コンサルタント
株式会社 福山コンサルタント 交通・環境マネジメント事業部 交通管理・計画 東京グループ 課長 末成浩嗣氏
末成氏:福山コンサルタント入社後、中谷と同様に道路・交通・都市計画分野の技術者としてコンサルティングを担当しています。

2015年4月からの2年間、国土交通省国土技術政策総合研究所に出向していた際に、プローブデータに関する先進的な研究に触れることができました。

2017年4月に福山コンサルタントに戻ってからは、実際のプロジェクトでエビデンスに基づいた政策判断を支援するため、プローブデータなどの活用に意欲的に取り組んでいます。

―プローブデータを活用するにあたり、課題になっていたのは何でしょうか?

中谷氏:プローブデータとは車両などから取得される走行位置や速度などの情報のことで、渋滞地点の把握・原因の分析、新しい道路の計画、都市開発など様々な取り組みに活用できます。
一つ目の課題は、データの購入プロセスにあります。これまでは期間やエリアなどの要件をデータ購入前に決めなければならず、分析対象の道路に対して必ずしも想定した通りの分析結果が得られないことがありました。

要件を決めて注文するためには事前に時間をかけて仮説を設定しなければなりませんし、想定した結果が得られるように条件を見直したい場合やもっと分析を深掘りしたい場合には追加でコストが発生することもありました。

このように、データ購入プロセスの効率化が課題の一つとなっていました。

末成氏:もう一つの課題は、業務負荷の削減です。
当社では、技術メンバーがデータ分析から顧客向けのレポート作成まで一連の作業に従事しています。

そんな中、プローブデータはデータ量が膨大(ビッグデータ)であるため作業の負荷がどうしても大きくなりがちです。

データ分析にかけられる時間が限られる中で、データのハンドリングを得意とする一部のメンバーに負担がかかってしまっている状態でした。

中谷氏:そこで、これらの課題を解決するソリューションを開発できないかと思うようになりました。

選定理由 偏りなくデータを取得できるHondaフローティングカーデータを活用したツールの開発へ

プローブデータに本田技研工業株式会社(以下、Honda)の「Hondaフローティングカーデータ」を選定された経緯を教えてください。

中谷氏:当社では国土交通省のプロジェクトを中心に、Hondaインターナビのプローブデータを2010年頃から使用していました。

その後、Hondaフローティングカーデータと名称は変わりましたが、プローブデータとして非常に扱いやすいデータとして認識しており、このデータを自治体や民間企業のプロジェクトにも活用できないかと考えたのが最初でした。


―Hondaフローティングカーデータと他のプローブデータとの違いはどこにあるとお考えでしょうか?

末成氏:例えば、国土交通省が提供しているETC2.0のプローブデータですと高速道路や直轄国道等のデータは豊富に取得されていますが、それ以外の道路のデータは不足している場合があります。また、カーナビゲーションに依存しているプローブデータですと、カーナビをオンにしたときにしかデータを取得できないため、データの特性に偏りが生じる可能性があります。

その点、Hondaフローティングカーデータは、全国で約420万台のHonda車両が道路や車載器に依存せず、走行中は常にデータを取得できることが特徴です。


たとえばカーナビを利用しないシーン(日常の通勤や買い物、休日のちょっとしたお出かけ)もデータが取得できるため、どんな道路でも満遍なくデータが蓄積されサンプルとして評価に活用しやすいのが強みだと感じています。

「交通分析ソリューション」を活用して分析する対象は幹線道路だけではなく地域の生活道路なども含まれます。地域や道路を評価する際は使用するデータの信頼性を問われることが多いため、偏りなくデータを取得できるというところは特に評価されているポイントです。


※HondaフローティングカーデータはHonda Total Care会員規約、および本田技研工業(株)のプライバシーポリシーに準拠してデータを匿名化および統計化して提供されており、豊富で正確なデータと地域や道路の偏りの少なさが特長のプローブ情報です。

約420万台のHonda車から情報を収集

1日のデータ収集距離は5000万km超

地域や道路に偏りの少ない常時取得のデータ

―「交通分析ソリューション」のツール化に至るまでの道のりを教えてください。

中谷氏:これまでに多くのプロジェクトでHondaフローティングカーデータを活用しており、様々な分野で活用できるデータだと理解していました。しかしデータを扱える人は限られていることから、プローブデータを広く使ってもらうためには、より簡単に活用できるものでないといけないと考えたのです。

そこで当社のデータ処理・交通解析ノウハウを活かしたツールになれば誰でも簡単に扱えるのではないかと思い、Hondaに相談したのが始まりです。
その頃ちょうど、ゼンリンデータコムもHondaに相談をしており、共同で解析ツールを開発する流れとなりました。

導入の効果 ツール化したことで業務効率化に寄与

―福山コンサルタントのアドバイスを受け「交通分析ソリューション」に実装された機能を教えてください

中谷氏:まず、誰でも直感的に使えるツールにすることが重要です。そのため、地図上に集計結果を表示し、視覚的に確認できるインターフェースとすることは大前提としました。
次に「経路分析」の機能です。具体的には「どこを出発してどこに到着したのか」といったOD(Origin-Destination)や「どのルートを通ったのか」という車の流れ(走行経路)を確認することができます。道路の区間ごとの走行速度が「速い・遅い」ということは他のツールでも見られますが、ODのデータがあることで交通の質を把握できるようになります。

もちろん、データは画像やCSVファイルでエクスポートできます。このツールでは車の流れを可視化できるようになりますが、建設コンサルタント業務ではそのまま終わることはほとんどありません。
特に道路の整備効果など対外的な公表資料に活用する場合は、見栄えの良い図表に加工することが多々あります。
集計した分析結果を自由に加工できる形式でエクスポートできれば、データの活用場面も広がります。
中谷様
―実際にプロジェクトで「交通分析ソリューション」を利用されて、使用感はいかがでしょうか?

中谷氏:様々な条件を設定して細かい分析をしようとしたとき、曜日や日時を好きなように設定できるので非常に使い勝手がよく直感的に利用できます。
ツールがなければ、1つずつ設定の条件を変えてみて可視化していくといったことを何回もトライしていく手間があります。
しかし「交通分析ソリューション」を使うと簡単に結果が得られるので、仮説検証も気軽に実施できます。

これまでプローブデータを自社で分析してレポート化するのには、多大な工数がかかっていました。
その点、「交通分析ソリューション」は専門的な技術は必要なくWebブラウザ上で操作できるツールですので、要件を伝えておけばアシスタントスタッフにも任せることができ、業務効率化に大きく寄与していると考えています。

起終点分析の例。起点、終点を市区町村ランキング形式で表示。どこから来てどこへ向かった車両が多いのか把握できる
末成氏:プローブデータが活用される以前は、限られた日時や限られた場所で取得された断片的なデータを使用することが多く、分析できることにも限界がありました。

しかし「交通分析ソリューション」なら流出入経路図で車の経路がわかるようになり、特定の道路を利用した人がどこから来て、その先どこに向かっているかまで分析できるようになります。
末成様
近年、高速道路の既存施設から一般道に出入りできるよう設置されたETC専用の簡易型インターチェンジ「スマートインターチェンジ」が整備されています。例えばこのスマートインターチェンジの整備による効果をプローブデータを活用して分析したケースがあります。

「交通分析ソリューション」を活用することで、どこからどこに行くために利用するケースが多いのか、整備前後でスマートインターチェンジ周辺の道路の使われ方がどのように変わったのかなどを分析でき、道路のより良い活用方法に止まらず、周辺施設の集客方法など地域の活性化を考えるためのヒントも得られると考えています。

「交通分析ソリューション」で、簡単に車の移動データを扱えるようになったことは、これまであまり活用していなかった小規模自治体や民間企業が抱える課題解決にも役立つのではないかなと思っています。
―「交通分析ソリューション」を活用して、具体的にどのくらいの工数削減につながっていますか?

末成氏:プロジェクトによって異なりますが、概ね半分以下にはなっています。内容によっては90%以上の工数削減に繋がったものもあります 。例えば行政の場合、要件定義、データ購入、準備されたデータの取り込み&一次処理、データの可視化作業…と行うと1~2ヶ月もかかる場合がありました。しかし「交通分析ソリューション」であれば、データを受け取って1日あればある程度の形にできることもあります。

例えば、「交通分析ソリューション」を活用して、渋谷駅周辺の通行規制に向けた広域的な経路状況を確認したのですが、時間帯によって主な経路が異なることを1時間もかからずに地図上で確認することができました。
▼時間帯によって経路が異なる例
a)19~24時

b)0~7時

また、結果を特定の箇所だけではなくエリア全体で面的に把握できるので、元々の議論の中心ではなかった周辺の道路について「ところでこの道路は通勤時に渋滞している?」という感じで派生して確認していく場合にも非常に有効です。工数削減とは異なる視点ですが、俯瞰的に見ることで新たな課題に気づくことがあります。ビッグデータを簡単に活用できることで、これまでは認識できなかった本質的な課題を理解することにも繋がるのではないでしょうか。
工数削減
新たな課題に気づく
活用が容易

今後の展望 プローブデータの根本はその地域の方々の活動データ。スマートシティのプロジェクトなどを通じて、より魅力的なまちづくりに貢献したい

―交通分析ソリューションに対する改善要望があれば教えてください。

中谷氏:レポートを作成する際にツールだけで作業が完結するシーンが増えるよう、ユーザーの皆様のご意見を伺いながら、より良いユーザーインターフェースに改善を進めてもらえると良いですね。

また最新の値をすぐに確認できるデータの鮮度も重要なので、注文してから実際にデータを見るまでのタイムラグも短くなれば嬉しいです。

末成氏:もうひとつはツールの利用期間が決まっており、3ヶ月で期限切れになって使えないシーンが発生する場合があることです。

当社の業務は半年~1年単位でプロジェクトが動くことが多いので1年間使える形が建設コンサルタントとしてはありがたいですね。


―ありがとうございます。最後に、御社の将来的な展望をお聞かせください。
中谷氏:当社には近年、スマートシティをはじめとするビッグデータを活用した行政プロジェクトのご相談が増えてきています。
これまでプローブデータを活用する機会の少なかったお客様や分野に対しても、データ活用いただく機会を広げていきたいと考えています。

末成氏:当社ではこれまで幅広くプローブデータを活用してきました。
プローブデータというとどうしても「道路評価に対して使うもの」という印象が大きいのですが、根本は地域で生活される方々の活動データだと考えています。
そういった意味でもまちづくりなど、より広い視点・フィールドで活用する機会が増えていくことを期待しています。

「交通分析ソリューション」とは

約420万台のカープローブデータを可視化、分析結果をダウンロードすることができるWebツールです。
報告書へ掲載する画像作成の手間を軽減することや様々な条件でデータを確認することで、より効果的なデータ分析を行うことが可能です。
建設コンサルタントや自治体など、幅広い分野・業種でご活用いただけます。

「交通分析ソリューション」のサービス詳細、導入についてお気軽にお問い合わせください。

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