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「VMware Cloud on AWS」を利用したクラウド化で得られたもの ~安定稼働、コストの低減、品質向上~

人材の確保やプロセスの変更、アプリの再設計、工数、コスト、セキュリティ…。IT業界においてクラウド化が叫ばれて久しいですが、クラウドの導入にはさまざまな課題が存在します。


ゼンリンデータコムでは、クラウドの特徴である柔軟なスケーリング機能を目的として、早期からAmazon Web Services(以下AWS)の導入に取り組み始めていました。2016年ごろには”クラウドファースト”の考え方はすでに根付いており、新規システムはAWS前提で構築する流れになっていましたが、既存システムのクラウド化については頭を悩ませていました。


本記事では、ゼンリンデータコムが既存システムのクラウド化をどうやって成し遂げたか、それによって得られたものをご紹介したいと思います。
 
ちなみに、今回対象としているのは、商用サービスが稼働するITインフラになります。多数の機器を維持管理している現状からパブリッククラウドに移行するものであり、SaaSへの置き換えなどは含みません。

目次[非表示]

  1. 1.既存システムのクラウド化にあたっての課題
  2. 2.VMware Cloud on AWSとは
  3. 3.VMware Cloud on AWSを採用した理由
  4. 4.VMware Cloud on AWSの導入で苦労したこと
  5. 5.VMware Cloud on AWSの導入で得られた3つのメリット
    1. 5.1.メリット① システム安定性とコストの低減
    2. 5.2.メリット② インフラ部門の技術力向上
    3. 5.3.メリット③ 社の知名度向上
  6. 6.まとめ
      1. 6.0.1.※参考:VMware Cloud on AWS Day イベントレポート


既存システムのクラウド化にあたっての課題

一概に”クラウド化”といっても様々な手法があります。

クラウドサービスのメリットを享受するためには、既存システムに対して相応のアプリケーション改修が必要になることがほとんどです。そのため、ITインフラのコストだけでなく、クラウド化のためのプログラム修正開発コストも莫大なものになる可能性があり、多くの取捨選択を迫られます。


クラウド移行に際して、まずは移行先とするクラウドサービスの特性を理解することが重要になりますが、ゼンリンデータコムは長期にわたってAWSを利用しているため、そこは問題ありませんでした。

しかし、既存システムをAWS環境で安定運用できるよう適合させるには膨大な修正が必要になり、その課題を解決できる手法を探っていました。


VMware Cloud on AWSとは

VMware社とAWS社が共同で開発した、AWS上でVMwareの仮想環境が稼働できるVMware社のIaaSです。自社で利用する場合には別途ライセンス費用が掛かる高度な仮想化技術や、仮想マシンを管理する各種環境がセットで提供されます。2017年にアメリカでローンチされ、2018年に日本にて大々的にリリースされました。


ゼンリンデータコムは、日本でのアーリーアダプターとして2度のPoCを実施し、既存システムのクラウド移行先として正式利用を決定。VMware社と密に連携しながら2020年にクラウド化を完了させ、自社サービスの開発に適した安定したITインフラを提供することができています。


VMware Cloud on AWSを採用した理由

ゼンリンデータコムでは既存システムをVMwareで仮想化していました。そのため、既存の仮想マシンをそのままクラウド化できることでアプリケーション改修が非常に少なく、開発担当者への負担が軽減できるとしてVMware Cloud on AWSを採用しました。2度のPoCを通じて仮想マシンの稼働に関する互換性は確認できました。


VMware Cloud on AWSでは、AWSが提供する各種マネージドサービスを統合的に利用することはできませんが、ハードウェアの運用管理から解放されることは大きなメリットであると判断しました。


VMware Cloud on AWSの導入で苦労したこと

前述通り開発部門の負担は軽減されますが、インフラ担当としてはVMware Cloud on AWSの利用前提となる仮想化技術(ネットワーク仮想化、ストレージ仮想化、ライブマイグレーション機能など)に既存システムを適合させていくことが必要になりました。

特にネットワーク仮想化は大工事です。オンプレミスのネットワークコンセプトを見直し、移行後の仮想ネットワークで実装できること・できないことを整理して設計を確定させていくことが必要でした。


ゼンリンデータコムではシステムインテグレータに過度に依存せず内製でシステム構築を行ってきた文化がありました。そのため、コンセプトを整理して実装に落とすような試行錯誤が素早く実施できたことが導入成功のカギになりました。


VMware Cloud on AWSの導入で得られた3つのメリット


メリット① システム安定性とコストの低減

2020年10月から本格的に稼働し、現在までVMware Cloud on AWS 起因の大きな障害は0件と安定稼働を続けています。運用管理のための機能もVMware社のサポートも手厚く、クラウド移行前よりもインフラサービスとして提供できる品質が向上したことを実感しています。また、ハードウェアの進歩と各種仮想化技術の利用によって仮想マシンの集約密度を高めることができたため、オンプレミス時と比較して約40%のコストダウンにも成功しました。


メリット② インフラ部門の技術力向上

エンジニアを擁している組織であればどこでも「エンジニアの技術力向上」が潜在的課題だと思います。ゼンリンデータコムでもオンプレミス担当とクラウド担当が同一部門内で別チームとして活動しており、どうやったら両チームの良いところを融合し調和できるか模索していました。今回のVMware Cloud on AWSはまさにそのようなチーム間の懸け橋となるチャレンジであったと感じています。


メリット③ 社の知名度向上

VMware、AWSというIT業界の両雄が生んだサービス、かつ、日本のアーリーアダプターということで、IT業界内での注目度も高く、さまざまなメディアで露出する機会が増えました。VMware、AWS両社との関係がより一層強くなったことや、本件のつながりで他のクラウドユーザーと意見交換をしたり、中途社員の採用にもつながるなど、好循環のきっかけになりました。


まとめ

ITインフラの運用では、安定性、コスト、スピードの向上が主たるミッションになります。クラウド化は有効な手段のひとつである事は間違いありませんが、クラウドのデメリットも理解した上で、計画的に利用していく手腕がユーザーに求められます。


今回はゼンリンデータコムがどのように既存システムをクラウド化したかについて紹介させていただきました。インフラ部門はエンドユーザーから直接見えない縁の下の力持ち的な存在ですが、社会へ貢献できるより良いサービス開発のためのインフラ環境を目指し、新しい技術を取り入れて絶えず挑戦していきたいと考えています。


※参考:VMware Cloud on AWS Day イベントレポート


ゼンリンデータコム編集部
ゼンリンデータコム編集部
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